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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第4章 「気づかれない者たちが、世界を変える」

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第4章 第2話「力と力」

ガオルだけ再び現れた。

まるでそれがリオの力を試したかったか”だけ”のように。

空気が、裂けた。

ガオルが地を蹴る。

重い。速い。

大地が揺れるような踏み込み。

その拳が——リオへ一直線に向かう。

「——っ」

セリアが息を呑む。

だが。

リオは動じない。

一歩。

ただ一歩だけ横にずれる。

ガオルの拳が、空を切る。

「……」

ガオルの目が細くなる。

「避けるか」

「当たる理由がない」

リオが淡々と答える。

ガオルは止まらない。

今度は横から。

蹴り。

重い一撃。

だが——

リオはまた、最小限だけ動く。

ギリギリで流す。

「なぜ返さない」

ガオルが低く問う。

「必要ないから」

「戦えないのか」

「そう見える?」

問い返す。

ガオルは一瞬だけ止まる。

弱くはない。

それは分かる。

だが——

「戦わない強者は、弱者と同じだ」

はっきりと言い切る。

獣人族の価値観。

強さは使ってこそ。

「そういう考えもあるね」

リオは否定しない。

「でも俺は違う」

「どう違う」

「使わないで済むなら、その方がいい」

ガオルの眉が寄る。

「逃げだ」

「効率だよ」

価値観がぶつかる。

平行線。

どちらも引かない。

その間——

セリアは、二人のやり取りを見ていた。

(リオは……やっぱり戦う気がない)

当たり前だ。

こんな状況、普通なら全力で戦うか逃げるかだ。

なのにリオは——

淡々としている。

怖くないのか。

怒らないのか。

(私は……)

セリアは自分の手を見る。

震えている。

怖い。

当然だ。

目の前の獣人族は、圧倒的だ。

魔法を使っても、止められる気がしない。

(何もできない)

その言葉が、頭の中で響く。

だが——

目は、逸らさなかった。

怖くても。

無力でも。

見続ける。

そのとき。

ガオルの視線が、わずかにセリアへ向いた。

一瞬だけ。

(……あのエルフ)

怯えている。

震えている。

それは分かる。

だが——

逃げない。

(なぜだ)

理解できない。

戦えない者が、なぜここに立っている。

その違和感が、頭の片隅に引っかかる。

「……」

ガオルは再びリオへ向き直る。

「お前に聞く」

「なに」

「あのエルフ」

視線だけでセリアを示す。

「なぜ連れている」

リオは少し考えてから——

「俺が連れてるんじゃない」

「あいつが勝手についてきてる」

セリアが振り向く。

「ちょっと、言い方」

「事実でしょ」

「事実だけど……」

ガオルは、そのやり取りを見ている。

「……戦えないのに、なぜここにいる」

今度は直接、セリアへ向けて問う。

セリアが固まる。

「それは……」

言葉を探す。

「怖いだろう」

「怖い」

即答だった。

ガオルがわずかに目を細める。

「なら逃げればいい」

「逃げたら、見えなくなるから」

静かな言葉。

だが——

空気が、少しだけ変わった。

「……見える?」

ガオルが問う。

「うん」

セリアは続ける。

「逃げたら、何が起きてるか分からなくなる」

「分からないまま、遠くにいたくない」

「だから、ここにいる」

沈黙。

風が吹く。

ガオルは、しばらくセリアを見ていた。

理解はできない。

獣人族の価値観では——

戦えない者が前にいる理由がない。

だが。

(……嘘ではない)

本能が、そう告げる。

この小さなエルフは、本気でそう思っている。

「……」

何かが、胸の奥で引っかかる。

うまく言葉にできない。

「今日はここまでだ」

ガオルが一歩、引く。

「え?」

セリアが驚く。

「次は決着をつける」

リオを見る。

「逃げるなよ」

「逃げるかもよ」

「……お前な」

ガオルが低く唸る。

だが——

その目は、さっきまでとは少しだけ違っていた。

完全な敵意ではない。

何か——

「混じってる」

セリアが小声でリオに言う。

「なにが」

「ガオルの目」

リオは少しだけ目を細める。

「気づいた?」

「うん」

「じゃあ大丈夫」

「何が大丈夫なの」

「流れ」

あっさり言う。

セリアは呆れる。

「ほんと説明が足りない」

「そのうち分かるよ」

風が吹く。

ガオルが森の奥へ消えていく。

ガオルの背中が、木々の影に消える直前——

一瞬だけ。

振り返った。

セリアと目が合う。

すぐに背を向ける。

だが——

その一瞬が、確かにあった。

「……ねぇ」

セリアが呟く。

「なに」

「これ、うまくいく?」

リオは少し考えてから——

「さあ」

と答えた。

「でも」

少しだけ笑う。

「悪くはない」

セリアは小さくため息をつく。

それでも——

その目は、前を向いていた。

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