表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第3章 「変わらない世界」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/63

第4話「帰る場所」

森の色が、変わった。


深い緑。


澄んだ空気。


風が柔らかい。


「……ここ」


セリアが立ち止まる。


「私の故郷の近く」


声が、少しだけ軽くなる。


今までとは違う響き。


「そうなんだ」


リオが周囲を見渡す。


(……静かだな)


だがそれは、獣人の森とは違う。


もっと整っている。


整いすぎている。


「懐かしい?」


「うん」


セリアが小さく笑う。


「ここ、好きだった」


過去形。


その言い方に、リオは少しだけ目を細めた。


「戻るの、久しぶり?」


「うん……結構」


少しだけ間。


何かを言いかけて、やめる。


「行こう」


自分から歩き出す。


その背中を、リオは何も言わずに追う。


やがて。


視界が開ける。


そこにあったのは——


静かな集落。


木々と一体化したような建物。


水の流れる音。


そして。


「……変わってない」


セリアが呟く。


だが、その声には——


わずかな違和感。


「誰だ」


静かな声。


振り向くと、エルフの男が立っていた。


長い耳。


整った顔。


だが、目は鋭い。


「セリア?」


その名を呼ぶ。


一瞬の沈黙。


「……ただいま」


セリアが言う。


その言葉に、男の表情が少し緩む。


「戻ってきたか」


短く言う。


だが、抱きしめることも、喜ぶこともない。


「そっちのは」


視線がリオに向く。


「連れ」


セリアが答える。


「人間か」


「そう」


少しだけ間。


「通せ」


あっさりと言う。


セリアが驚く。


「いいの?」


「問題ない」


獣人と同じ言葉。


同じ響き。


「今は、均衡が保たれている」


セリアの目が、わずかに揺れる。


(また……)


その言葉。


どこでも同じ。


「……ありがとう」


違和感を飲み込み、進む。


村の中。


視線はある。


だが、強くない。


敵意も、歓迎もない。


ただ——


“受け入れられている”。


それが逆に、引っかかる。


「ねぇ、リオ」


小声で言う。


「なに」


「変じゃない?」


「どの辺が」


「みんな、あっさりしすぎてる」


その通りだった。


久しぶりに帰ってきた者への反応としては、薄い。


「……そうだね」


リオも頷く。


(感情が薄い……いや)


違う。


「削られてる」


「え?」


「なんでもない」


誤魔化す。


確信はまだない。


だが——


“何か”が作用している。


そのとき。


「セリア」


別の声。


振り向く。


一人の女性エルフ。


年長。


落ち着いた雰囲気。


「……長」


セリアが小さく呟く。


「戻ったのね」


穏やかな声。


だが、その目は——


どこか遠い。


「はい」


セリアが頭を下げる。


「無事でよかった」


言葉は優しい。


だが。


どこか“決められた言葉”のように聞こえる。


リオはそれを観察していた。


「その者は?」


長の視線が向く。


「リオ」


セリアが紹介する。


「……そう」


短い反応。


そして。


「話がある」


それだけ言って、背を向ける。


「ついてきなさい」


命令ではない。


だが、拒否する選択肢も感じない。


「……うん」


セリアが頷く。


歩き出す。


リオも続く。


その背中を見ながら——


(……濃いな)


違和感が。


ここは、特に強い。


整いすぎている。


静かすぎる。


“均衡”が、強すぎる。


(……中心に近いか)


まだ見えない。


だが確実に——


この場所は、“何か”に近い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ