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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第3章

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第3話「関わらない選択」

「——止まって」


リオが足を止めた。


セリアもすぐに立ち止まる。


「どうしたの?」


「前」


短い答え。


耳を澄ます。


……音。


剣がぶつかる音。


叫び声。


「戦ってる……?」


「うん」


少しだけ間。


「人間と獣人」


セリアの表情が変わる。


「行こう」


即座に言う。


だが——


「行かない」


リオは動かない。


「え?」


「関係ない」


淡々とした返答。


「でも——!」


「さっき見ただろ」


リオが言う。


「ここじゃ普通」


「普通でも!」


セリアが一歩前に出る。


「助けられるなら——」


「助けた後は?」


言葉が止まる。


「え……」


「どっちにつくの?」


「それは……」


「人間?獣人?」


選ばなければならない。


その現実。


「……」


答えられない。


「中途半端に入ると、両方敵になるよ」


リオの声は冷静だった。


経験から来る、確信。


「……でも」


セリアは俯く。


「見て見ぬふりは……」


「それも選択」


静かに言う。


冷たいわけじゃない。


ただ、現実的。


沈黙。


数秒。


遠くで、叫び声が響く。


セリアの手が、震える。


「……少しだけ、見てくる」


そう言って、走り出した。


「セリア」


止めない。


リオは、その背中を見送る。


(……分かってるくせに)


自分でも。


それでも行く。


それが——


彼女の選択。


少し遅れて、リオも歩き出す。


走らない。


急がない。


その先。


開けた場所。


そこに——


戦いがあった。


人間の兵士、三人。


獣人が二体。


すでに血が流れている。


「やめて!」


セリアが割って入る。


「これ以上は——」


その瞬間。


一人の兵士が振り向く。


「エルフ……!?」


「助けてくれ!」


叫ぶ。


「こいつらに襲われた!」


一方。


獣人は何も言わない。


ただ、構えている。


セリアが振り返る。


「本当なの?」


獣人を見る。


沈黙。


そして——


「先に来たのは、あいつらだ」


短い言葉。


「領域を越えた」


「嘘だ!」


兵士が叫ぶ。


「こいつらが——」


「黙れ」


獣人が低く言う。


「先に斬ったのは、お前だ」


空気が張り詰める。


どちらも譲らない。


セリアの呼吸が浅くなる。


(どっちが……)


分からない。


どっちも本当かもしれない。


どっちも嘘かもしれない。


「……もうやめて」


絞り出すように言う。


「ここで争っても——」


「関係ない!」


兵士が叫ぶ。


「殺らなきゃ殺られるんだ!」


その言葉は、真実だった。


獣人も同じ。


「どけ」


獣人が言う。


「邪魔するなら、同じだ」


セリアが動けない。


足が止まる。


(どうすればいい……)


そのとき。


「——セリア」


リオの声。


振り向く。


そこにいる。


いつも通りの顔で。


「戻るよ」


「え……?」


「もう終わる」


その言葉と同時に。


兵士が動いた。


斬りかかる。


獣人が迎撃する。


衝突。


一瞬。


そして——


「っ……」


静寂。


兵士の一人が、崩れ落ちる。


血が広がる。


「……」


セリアの目が見開かれる。


間に合わなかった。


止められなかった。


「……ほら」


リオが言う。


「こうなる」


責めるでもなく。


ただ、事実として。


セリアの手が震える。


「……私」


何もできなかった。


「戻ろう」


リオが言う。


「これ以上は、巻き込まれるだけ」


セリアは動かない。


倒れた人を見る。


獣人を見る。


何も言えない。


「……っ」


唇を噛む。


そして——


ゆっくりと、歩き出した。


リオの隣に戻る。


しばらく無言。


風の音だけが続く。


やがて。


「……リオ」


「なに」


「さっきの、正しかった?」


問い。


震える声。


リオは少し考えてから——


「分からない」


と答えた。


「え……」


「正しいかどうかは、その後でしか分からない」


セリアは黙る。


その答えは、救いにならない。


でも——


嘘でもない。


「……そっか」


小さく呟く。


その目は、まだ揺れている。


だが。


完全には折れていなかった。

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