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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第3章

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第2話「強さの基準」

獣人の集落は、森の中に溶け込むように存在していた。


木を削っただけの建物。


囲いも、門もない。


だが——


「……見られてるね」


セリアが小さく言う。


「あちこちから」


「うん」


リオは軽く頷く。


視線は隠れていない。


むしろ堂々と観察されている。


屋根の上。


木の影。


地面に座る者。


すべてが“警戒”ではなく——


「測ってるな」


リオが呟く。


「測る?」


「強さ」


その言葉に、セリアは少しだけ納得した。


確かに。


敵意というより、“興味”に近い。


「……変な感じ」


「ここじゃ普通だよ」


そのとき。


「来たか」


前方から声。


昨日の獣人ではない。


もっと年長。


体は大きく、傷だらけ。


明らかに“強い”。


「外の者」


じっと見られる。


まずリオ。


そしてセリア。


「人間と……エルフか」


「通してくれてありがとう」


セリアが頭を下げる。


獣人は反応しない。


視線はずっとリオにある。


「……お前」


低く言う。


「妙だな」


「よく言われる」


「気配が薄い」


「そう?」


「だが、弱くはない」


その評価は正確だった。


「面白い」


一歩、近づく。


圧が増す。


「試すか」


セリアがびくっとする。


「え、ちょ——」


「大丈夫」


リオが止める。


「軽くでしょ」


「軽く、だ」


獣人が頷く。


その瞬間。


地面を蹴る。


速い。


一直線。


拳が来る。


——止まる。


リオの前で。


ピタリと。


「……」


獣人の目が細くなる。


「見えているか」


「見えてるよ」


リオは動かない。


ただ見ている。


「じゃあ、これならどうだ」


次は横。


蹴り。


角度が変わる。


だが——


「遅い」


リオが一歩動く。


最小限。


それだけで、全部避ける。


「……なるほど」


獣人が距離を取る。


「強いな」


素直な評価。


「そっちもね」


「当然だ」


即答だった。


周囲の空気が少し変わる。


ざわめき。


「認められた?」


セリアが小声で聞く。


「半分くらい」


リオが答える。


獣人が言う。


「強さはある」


「だが」


少しだけ間。


「お前、戦わないな」


核心だった。


セリアが息を呑む。


「……そう見える?」


「見える」


即答。


「強いのに、使わない」


「無駄だから」


「無駄?」


「必要なときだけでいい」


獣人は少し考える。


そして——


「気に入らんな」


はっきり言った。


「え!?」


セリアが驚く。


「なんで!?」


「強さは使ってこそだ」


真っ直ぐな価値観。


「持ってるのに使わないのは、弱さだ」


その言葉に、リオは少しだけ目を細めた。


「……そういう考えもあるね」


否定しない。


だが肯定もしない。


「お前は違うのか」


「違うね」


はっきり言う。


「使わないで済むなら、その方がいい」


「逃げだな」


「効率だよ」


価値観がぶつかる。


だが——


どちらも引かない。


少しの沈黙のあと。


「……まあいい」


獣人が言う。


「戦わない強者も、いる」


納得ではない。


だが、許容。


「ただし」


指を向ける。


「いざというとき、逃げるな」


「逃げるよ」


即答だった。


「え」


セリアが固まる。


「無理なら逃げる」


「……お前な」


獣人が呆れる。


だが——


「嫌いじゃない」


ぽつりと呟く。


「生き残る方を選ぶか」


それもまた、一つの強さ。


「通れ」


背を向ける。


「好きにしろ」


許可が下りる。


セリアはほっと息を吐いた。


「……なんとかなった」


「まあね」


歩き出す。


その途中。


セリアが言う。


「ねぇ」


「なに」


「さっきの、どっちが正しいと思う?」


強さは使うべきか。


使わないべきか。


リオは少し考えて——


「どっちも」


と答えた。


「え?」


「状況次第」


「またそれ」


「それが一番正確だからね」


セリアは少しだけ笑う。


「ほんと曖昧」


「そう?」


「うん」


でも、と続ける。


「ちょっとだけ分かってきた」


「なにが」


「リオの考え方」


その言葉に、リオは少しだけ目を細めた。


(……それはどうかな)


理解されるのは、慣れていない。


でも——


完全に悪くもなかった。

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