第5話「魔族の村」
「話す、ねぇ」
グラムが肩を鳴らす。
「悪くねぇ」
にやりと笑う。
「どうせなら、ちゃんとした場所でやろうぜ」
「ちゃんとした場所?」
セリアが警戒した声を出す。
「俺らのとこだよ」
さらっと言う。
「……それって」
「魔族の村」
沈黙。
セリアの顔が固まる。
「いやいやいや」
一歩下がる。
「それ完全にダメなやつでしょ!?」
「何が」
「全部!」
即答だった。
グラムは少しだけ考えてから、
「まぁ、普通はそうか」
と納得する。
「普通じゃないしな」
リオが横から言う。
「お前基準にすんな!」
セリアがツッコむ。
だが、すぐに真顔に戻る。
「……危ないよ」
小さく言う。
「囲まれるかもしれない」
「可能性はあるな」
グラムはあっさり認める。
「でも——」
リオを見る。
「来た方が分かるぜ」
その言葉は、どこか本気だった。
「俺らが何なのか」
少しだけ空気が変わる。
ゼルヴァは何も言わない。
ただ観察している。
(……誘導か)
リオは考える。
罠の可能性。
だが——
(情報は多い方がいい)
そしてもう一つ。
(どうせ、いずれ関わる)
なら、早い方がいい。
「いいよ」
リオが言った。
「行こう」
「ちょっと!?」
セリアが振り向く。
「軽すぎない!?」
「重く考えても結果同じでしょ」
「いや変わるかもでしょ!」
「変わらないよ」
あっさり。
セリアは頭を抱える。
「……もういい」
諦めたように息を吐く。
「行くよ」
「いいの?」
「一人で行かせる方が無理」
その言葉に、リオは少しだけ目を細めた。
グラムが笑う。
「決まりだな」
踵を返す。
「ついて来い」
森の奥へと歩き出す。
ゼルヴァも無言で続く。
リオとセリアも、その後ろへ。
進むほどに、空気が変わる。
重い。
濃い。
「……なんか、息苦しい」
セリアが呟く。
「魔力が濃いからね」
「これ普通なの?」
「魔族にはね」
やがて——
視界が開けた。
そこにあったのは、村だった。
だが人間のそれとは違う。
木々を削り出したような建物。
地面に直接刻まれたような道。
そして——
視線。
無数の視線が、一斉に向く。
「……来たか」
誰かが呟く。
「人間……?」
「いや……」
ざわめき。
その中で。
一人の魔族が、リオを見て固まる。
次の瞬間。
「……っ」
膝が、落ちた。
ドサリ、と。
完全な跪き。
それを見て——
空気が凍る。
「おい……」
「なんで……」
動揺が広がる。
一人、また一人と。
“感じてしまう”。
「……まさか」
誰かが呟く。
その言葉は、誰も口にしない。
だが全員が理解し始めていた。
中心にいるのは——
誰か。
セリアの手が、無意識に震える。
(これ……まずい……)
完全に“異物”として認識されている。
いや、それ以上。
「……面白ぇな」
グラムが笑う。
楽しそうに。
「ここまで分かりやすいとはな」
ゼルヴァは、静かに目を細める。
「……確定に近づいたな」
リオは周囲を見渡した。
(……やっぱり、こうなるか)
懐かしい光景。
何度も見てきた反応。
だが——
「ねぇ、リオ」
セリアが小さく言う。
「これ……どうするの?」
答えは、まだ決まっていない。
だが一つだけ、確かなことがある。
ここはもう——
“無関係でいられる場所”ではない。




