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この世界にはどうやら魔王が最強でほかにも獣人族エルフ族小人族がいるようです  作者: 1010
第2章

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第6話「理解と拒絶」

ざわめきは、しばらく消えなかった。


視線。


警戒。


そして——


畏れ。


リオが一歩進むたびに、空気がわずかに揺れる。


道が、自然と開く。


「……露骨だな」


リオが呟く。


「いや、これ普通じゃないからね!?」


セリアが小声で返す。


「めちゃくちゃ見られてるし!」


実際、視線は刺さるようだった。


だがそれは“敵意”だけではない。


もっと複雑なもの。


「……混ざってる」


リオが言う。


「え?」


「恐れと、期待と……反発」


「反発?」


「うん」


その証拠に。


「——止まれ」


低い声が響いた。


前方。


一人の魔族が立ちはだかる。


腕を組み、睨みつける。


「グラム、何を連れてきた」


「見ての通りだ」


軽く返す。


「ふざけるな」


その視線が、リオに向く。


「なぜ人間を——」


言葉が、止まる。


一瞬。


ほんの一瞬だけ。


目が揺れる。


(……感じた)


セリアにも分かった。


この人も、“何か”を感じた。


だが——


「……っ」


歯を食いしばる。


「関係ない」


無理やり押し込める。


「ここは人間の来る場所じゃない」


「だとよ」


グラムが肩をすくめる。


「どうする?」


リオは少しだけ考えて——


「別に帰ってもいいけど」


「え?」


セリアが驚く。


「いいの?」


「無理にいる場所でもないし」


あっさり。


だが、その言葉に。


ざわ、と空気が揺れた。


「……逃げるのか」


魔族が言う。


挑発。


「逃げる理由もないけど」


リオは視線を向ける。


「歓迎されてないなら、意味ないでしょ」


淡々とした言葉。


だが、その中に妙な余裕がある。


「……っ」


魔族が言葉に詰まる。


そのとき。


「——通せ」


別の声。


奥から、年配の魔族が現れる。


周囲の空気が変わる。


おさ……」


誰かが呟く。


「客だ」


短く言う。


「それも、特別なな」


視線がリオに向く。


一瞬だけ。


深く、測るように。


「……入れ」


道が開く。


今度は、明確に。


拒絶ではなく——


受け入れ。


だが、それでも。


完全な歓迎ではない。


その中を歩きながら。


セリアが小さく言う。


「……ねぇ」


「なに」


「なんか、怖い」


正直な感想だった。


リオは少し考えてから、


「正常だよ」


と答えた。


「え?」


「ここは、そういう場所だから」


人間の価値観が通じない場所。


弱ければ奪われる。


強ければ従われる。


単純で、残酷な世界。


「……私、あんまり好きじゃない」


セリアが呟く。


「だろうね」


「リオは?」


「嫌いじゃない」


即答だった。


セリアが顔を上げる。


「なんで?」


少しだけ間。


リオは前を見たまま言う。


「分かりやすいから」


「……分かりやすい?」


「うん」


「嘘が少ない」


その言葉に、セリアは黙る。


周囲を見る。


確かに。


敵意はある。


警戒もある。


でも——


(隠してない)


人間みたいに、裏で何かを企んでる感じじゃない。


全部、表に出ている。


「……それでも」


セリアは言う。


「傷つけることが前提なのは、嫌」


「それも分かる」


リオは頷く。


「どっちも正しいよ」


「え?」


「ここも、君も」


その言葉に、セリアは少しだけ驚いた顔をする。


「じゃあ……どうするの?」


その問いに。


リオはすぐには答えなかった。


(……どうする、か)


過去の記憶がよぎる。


支配したこともある。


放置したこともある。


壊したこともある。


どれも——


うまくいかなかった。


「……まだ決めてない」


それが、今の答えだった。


セリアは少しだけ安心したように笑う。


「そっか」


そのとき。


前方で、グラムが振り返る。


「おい、こっちだ」


広場のような場所に出る。


中心には、石の台。


そして——


多くの魔族。


全員が、見ている。


試すように。


測るように。


「……さて」


グラムが笑う。


「ここからが本番だぜ」


その言葉通り。


ここから——


“選ばれる側”ではなく。


“選ぶ側”としての時間が、始まる。

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