表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

八回目の真実

翌朝、直樹は彩に全部話した。


屋上で。空は曇っていた。風が冷たい。でも二人ともそれを気にしなかった。


直樹が話す間、彩は一度も口を挟まなかった。


本当の目的。特異個体。準決勝の相手ヴァール。ヴァールの星が消えるかもしれないこと。声の正体。


全部話した。


彩はしばらく黙っていた。


「……ずっと黙ってないで何か言え」


「まとめてる」


「まとめる必要があるくらい複雑か」


「複雑だよ」


彩は柵に肘をついた。


「一個ずつ聞いていい?」


「どうぞ」


「記憶が自分の中にあったって話」


「そうだ」


「じゃあ七回分の経験を全部自分で積んできたってこと?誰かに植え付けられたわけじゃなく」


「そういうことになる」


「すごいな」


「すごいのか」


「すごいよ。七回戦って、七回勝って、その記憶を全部自分の中に持ってる。それが消えないように自分の脳が勝手に保管してた。それって、あんたが特異個体だから、っていうだけじゃなくて、あんた自身が諦めなかったからじゃないの」


直樹は少し黙った。


「そういう解釈か」


「違う?」


「……わからない。でも、悪い解釈じゃない」


「あと、ヴァールのこと」


「ああ」


「直樹が勝ったらヴァールの星が消えるって……それは避けられないの?」


「今の段階では保証できない。でも管理者になれれば交渉の余地がある」


「交渉するって言ったよね、昨日」


「言った」


「約束してくれた」


「してる」


彩は深く息を吐いた。


「直樹がその約束を守れるように、まず勝ってきて」


「そのつもりだ」


「ヴァールも家族がいるんでしょ」


「子どもが三人いるらしい」


「だったら、直樹が勝ってもヴァールの星が助かるような未来を目指してほしい」


「目指す」


「きつい戦いになるんでしょ」


「互角かそれ以上かもしれないって言われた」


「体大丈夫かな」


「大丈夫だ」


「本当に?」


「本当に」


「嘘ついてない?」


「今のところ嘘ついてない。やってみないとわからないのは正直に言う」


彩はしばらく直樹を見た。


「直樹、去年からずっとつまらなそうにしてたじゃん」


「そうだな」


「あたし心配してたし、悔しかった。どうしたらいいかわからなかった。話しかけても空返事で、バスケ見にいっても無反応で」


「悪かった」


「謝らなくていい。でも一個だけ聞かせて」


「なに」


「今は?」


直樹は空を見た。


曇っていた。でも曇っているなりに空は空だった。


「今はつまらくない」


「なんで」


「理由がちゃんとある。守りたいものがある。本気でやれることがある。それだけで全然違う」


「あたしも含まれてる?」


直樹はしばらく黙った。


「含まれてる」


彩は前を向いた。


「それだけ聞ければいい」


「なんだそれ」


「今はそれで十分」


「意味がわからないな」


「女の子はそういうもん」


「そういうもんなのか」


「そういうもん」


「わかった」


「頑張れ」


直樹はしばらく、彩の横顔を見た。


ポニーテールが風に揺れていた。


守りたいな、と思った。


守れる力があることを、初めてよかったと思えた瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ