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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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75/78

75.錬金術師のお姉さん


 ところで錬金術って、実はよく知らないんだよね。なにかすごいものを作るってイメージしかないんだ。

 せっかく専門家とお知り合いになれたんだから、聞いてみよう!


「ふふ。錬金術なんて日常には馴染みがないから、理解しづらいよね」

 錬金術師のお姉さんは気前よく教えてくれたよ。


 簡単に言えば、モノを変質させる術のことなんだって。

 もともとは、石や鉄とかを、金銀宝石に変化させる方法、なんて研究をしてた学問だったらしい。そんなことができたら大儲けだね。


 で、たくさんの錬金術師たちが研究した結果、大量の鉄などを消費すれば、ちょびっとの金や銀を生み出せる、ということができたらしい。

 まあ、やればできなくはないけれど、儲けどころか大損じゃないか、ってことで研究は終わったんだ。


 だけど研究の過程で判明した、モノを変質させる術。これは他のことへも応用できるのではないか? という考えのもと、発展していった学問が錬金術なんだって。


 いろんなものを、従来の方法とは違ったやり方で作り出すことができる。

 薬師が作るようなポーションですら。


「立場的には、ユリシィ君ともライバル関係ということになるかもね」

 へー。じゃあ薬師と錬金術師って、競合相手になるのか。というより、それならいろんな業界と敵対関係になっちゃうんじゃないかな?


 聞いてみたら、その辺はわりとうまいことやってるみたい。

 競合相手の商品そのものを作るのではなく、必要素材や器具、設備などを錬金術で作り出して、相手に供給してたりもするんだって。錬金術師ギルドがそういった調整を請け負って、お互いに有益な関係を図っているのだとか。


「薬師ギルドとも取引してたはずだよ。薬草を自動で乾燥させたり、粉末にしたりする器具だったかな」

 それは便利そうだね。私には必要ないけど。今は石ゴーレムちゃんがやってくれてるからね。


 以前は薬師ギルドと錬金術師ギルドって、すごく仲が悪かったんだって。だけど双方の歩み寄りの努力で最近はそれほどでもないらしい。

 市場にポーションが不足したときなどは、むしろ錬金術師に依頼を出したりね。こないだの解毒ポーションのときとか。


 ちなみに錬金術師がポーションを作っても、平均的な品質のものしかできないし、『+』付きも作れないんだって。ガッツリ脅威になるほどでもないから、薬師ギルドも折れたのかもね。


「他にも、武器や防具に特殊効果を付与したりもしてるね」


 えっ、特殊効果って錬金術で付与してるんだ! そんなこともできるんだ。

 私も知ってる追加ダメージや命中補正の他にも、ダメージ軽減の防具とか、魔法属性の付与なんかもあるんだって。


「ボクの目標は、武器に追加ダメージ+99%の付与をすることなんだ!」

 おおっ、それって割合数値の追加ダメージのやつだ。私の短剣はすごいけど、固定数値だから初心者向けなんだ。割合数値は上級者向けらしいし、ヤーナさんが持ってるやつでも+15%だから、もっとすごい!

 100%は錬金術でも理論上作れないらしいから、錬金術で付与できる上限値が+99%なんだって。大きい目標だ。


 私の目標は何だろうな。薬師としての目標なんてあまり考えてなかったな。今までは儲けりゃいいって感じだったけど、ちょっと考えてみよう!

 そうだなあ、おばあちゃんみたいな、オリジナルポーションを作ってみたいね。


 私だけのオリジナルポーション! それって素敵だね。


 まあすぐにはできないだろうから、まずは依頼の『解毒ポーション+』。それに『中級ポーション』にも挑戦していこう。

 オリジナルは、少しずつ経験を積んで、実力をつけていってからの話だね。


 錬金術師のお姉さんとお話しできてよかったな。今後のことを考えるちょうどいい機会になったよ。


「そうだ、いたずらトレントの樹皮が少し余ってるんだ。ユリシィ君になにか作ってあげるよ」

 えっ、いいのかな。お姉さんはオークションに出品できるくらいすごい錬金術師だ。きっとすごいものを作ってくれるだろう。こんな機会は滅多に無いぞ。


 いたずらトレントの樹皮を使うと、防具にいろいろな付与ができるんだって。

 お姉さんがオークションに出品したものは、魔法使い用のローブで、なんと魔法ダメージ50%軽減の付与を施したらしい。これに魔法ギルドなどが大変な関心を示して、話題になっているそうだ。


 すごいね。魔法のダメージが半分か。でも私がこれまで戦ってきた相手には、魔法を使う敵はいなかったな。それより吹っ飛ばされることが多いよ。こないだのギガントもぐらとかさ。


「なるほど。では物理ダメージ系、いや衝撃緩和などはどうだろう」


 そんなのもできるんだね。衝撃緩和がいいな。もう吹っ飛ばされるのはたくさんだよ。

 でも私がもってる防具といえば、コボルドからくすねてきた盾だけなんだよね。ノームにもイヌコロ臭いって馬鹿にされたくらいだから、出すのはちょっと恥ずかしいかも?


「いや、この盾は木製だね。いたずらトレントの樹皮を使うから、金属製の盾より相性がいい。これにしよう。少しの間預かってもいいかな?」


 もちろんだよ。盾を強化してもらえるのはありがたい!

 お返しに、なにかお姉さんにしてあげられることは無いかな? 他に欲しい素材があるなら採ってくるよ。


「冒険者ギルドにいくつか依頼を出してるから、気が向いたときに受けてくれたらそれでいいよ」


 気前がいいね。見つけたら積極的に受けておこう!

 黒のお姉さんの依頼もあるし、これから忙しくなりそうだぞ。



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