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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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73.夕食会


 そうそう。そんな予定があったね。忘れてたわけじゃないけれど、今思い出したよ。


 セイルウ商会については、あれからちょっと調べてみた。

 規模はバーゲイン商会と同じくらいで、この街の一、ニを争うような大商会。魔道具とか富裕層向けの商品が得意みたい。


 商会長さんは、貫禄ある初老のおじいさんらしい。

 以前、盗賊ギルドを通じて私のことを嗅ぎ回ってきたんだ。盗賊ギルド員が暴走して面倒なことになったんだけど、その件で謝罪と弁明がしたいそうだよ。


 でもおそらくそれは、建前だろうね。


 目的はたぶん今度のオークションに関すること。私がバーゲイン商会長さんの屋敷に出入りしている冒険者だから、情報を握っていると思われてるのだろう。


 オークションで、冒険者ギルドから出品される『金族バットの置物』。商売人にとって垂涎の品らしい。

 私が取ってきたってバレてる? バレてないよね?


 まあいいや。適当にはぐらかして、おいしい夕食をごちそうになっちゃおう!


 ***


 当日は冒険者ギルドまで馬車が迎えに来たよ。

 場違いな北区を、徒歩で向かわなくて助かった。


 迎えに来たのは執事さんらしき男性。こちらは若い人だね。この人も小娘の私に対して丁寧な対応だ。

 馬車の中で執事さんからいろいろ聞いたよ。


 なんでも商会長さんは、今回みたいな夕食会を定期的に開催しているらしい。それも若い人を集めて。

 いろんな分野の若い才能と会食して、繋がりを持つことを目的としてるんだって。


 へー。商人もいろいろ考えてるんだね。それにしても若い才能でなんで私?

 まさか商人のカンで、私が変なモンハンターだとかオモロイモンゲッターみたいな扱いされてるのに気づいてるの?


 恐るべしベテラン商人! なるほどそんな奴がいたら、商人としては盗賊ギルドを使ってでも調べたくなるよね。


 あれっ? じゃあオークションとか関係なかったのかな?


 執事さんによると、私の他にも三人、今回の夕食会に参加してる人がいるんだって。

 コンテストに入賞した芸術家、珍しいアイテム作成に成功した錬金術師、最近頭角を現してきた聖女候補。


 わわ、すごい人達だ! そこに加わる平凡な薬師兼冒険者……。でもなんか面白そうだ。まあせいぜい楽しませてもらおうかな。


 馬車は北区の奥まった所のお屋敷に到着した。さすがに立派な邸宅だ。

 訪れたのは私が最後らしい。他の若者たちはすでに応接室で待機中とのこと。さてどんな人達がいるのかな。


 執事さんに連れられて、応接室にやって来た。


 扉が開いて、中にいたのは三人。ふかふかのソファに座っていたのは若い男性と、女性が二人……あれれれ?


「わあ、ユリシィちゃんじゃない!」


 女性のひとりが立ち上がって私へ声をかけてきた。私もびっくりしたよ!


 だってそこによく知ってる人――チヴェッテちゃんがいたんだもん!


「チヴェッテちゃんも呼ばれてたの!?」


 意外なところでの再会に私たちは手を取り合って喜んだよ。

 私たちが知り合いだってことはここの人も知らなかったみたい。冷静な執事さんも目を丸くしてた。


 来客が揃ったところで、みんなで食堂に移動することになった。

 男の人はガチガチに緊張してるみたい。もう一人の女性は物怖じしない性格なのか、鼻歌交じりに歩いてるよ。


 食堂はそれほど大きな部屋ではないようだ。だけど高価そうな絵画や置物がそこら中に飾ってある。

 椅子やテーブルもおしゃれなデザインで、雰囲気はよさそうね。


 勧められた席についたところで、杖をついた男性が入ってきた。

 この人がセイルウ商会の商会長さんか。そういえばバーゲイン商会の商会長さんも、初めて会ったときに杖をついていたね。流行ってるのかな。


「ああ、そのまま。ゆっくりしてくれたまえ」

 慌てて立ち上がろうとした私たちを、右手を上げて制した。


 小柄で細身、白髪交じりの穏やかな雰囲気のおじいさんだけど、背筋はピンと伸びてる。眼光も鋭いし、やっぱり一筋縄ではいかなそうな御仁だね。

 自らをセイルウ商会の商会長だと名乗り、参加者を紹介していく。


 男の人は芸術家で、彼が描いた絵画もこの部屋に飾られているんだって。

 女の人は錬金術師。彼女が作成したアイテムがすごくて、今度のオークションに出品される予定だとか。


 おや? ということは……もう一人の、聖女候補って、チヴェッテちゃんのことなの!?


「彼女はつい最近、この街の長年の懸案事項だった問題を解決したのだ」

 誇らしげに商会長さんが褒め称える。


 この街の北にある、スカレ大霊園。ここ数年は、ずっと立入禁止となっていた。原因は高ランクの魔物、レイスが巣食っていたからだ。

 レイスはアンデッドモンスターの中でも、相手の生命力を吸い取る危険な魔物だ。並の神官では太刀打ちできないので、放置されていた。


 そのレイスが先日、一人のシスターによって除霊された。


 シスター・チヴェッテの活躍はまたたく間に広まり、聖女だと持て囃す者すら出てきたという。

 へえ、すごい! さすがチヴェッテちゃんだね!


 でも商会長さんに聖女候補だと紹介されたチヴェッテちゃんは、ちょっと苦い顔をして無理に笑ってた。あまり嬉しくはないのかな?


 隣に座ってるチヴェッテちゃんが小声で教えてくれたよ。

 聖女様って今は王都に実在してるから、勝手に自称すると面倒なことになるんだって。だから聖女候補だって抑えた言い方になったらしいけれど、それでもあまり当人にとってはあまりありがたい話でもないみたい。厳しく罰せられるわけじゃないそうだけど。


 それと、チヴェッテちゃんがレイスを除霊できたのは、例の魔力増強ポーションのおかげなんだって主張してるよ。

 チヴェッテちゃんがレイスに挑戦したのはニ回目で、前回は魔力不足で失敗したらしく、魔力が増えた今回挑戦してみたら成功した、ということだ。


 それでもチヴェッテちゃんの実力だよね。すごいことには変わりないよ。


 ここまで三人のすごい若者が紹介されたわけだけど、そんなすごい人たちに並んで呼ばれた私は、どう紹介されるのだろうね?


「最後は冒険者のユリシィ殿だ。まずユリシィ殿には謝罪せねばなるまいな。調査段階で迷惑を掛けた。このとおりだ」

 わわっ、貫禄ある商会長さんに頭を下げられたよ! 居心地悪いから頭を上げて!


 例の襲撃者の件だろうね。あれは盗賊ギルドの人が勝手にやったらしいから商会長さんに謝られてもね……。

 商会長さんは将来有望な若者を探し出して招待するため、いろんな伝を使って情報を集めているらしい。盗賊ギルドに依頼したのはその一環だそうだ。


 私を調べようと思ったのは何故かな? まさか……。


「紹介を続けよう。彼女は冒険者ギルドで最近注目を集め始めてる有望な若者だ。なんでも珍しい魔物を次々と……」


 やっぱり変なモンハンター扱いだったよ!



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