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追加ダメージ+9999の短剣拾った  作者: 赤戸まと


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69.ノームの頼みごと


「這いつくばって進む人間族なんぞ、初めて見たのう……」


 ちっちゃいおじいちゃん、精霊ノームが私を見下ろして何かぶつぶつ言ってるよ。

 うーん、これはよくないね。私がノームのことをよく知らないように、ノームも人間のことはよく知らないんじゃないかな。このままだと、私のせいで人間のことを誤解させちゃうよ。


 普通の人間は地を這わないからね。とりあえず勘違いされないように、すっくと立ち上がった。


「うおっ、立った! 人間族が立ちおった!」


 精霊族とはケンカにならないように気をつけないといけないよ。礼儀正しくあいさつしよう!


「こんにちは。人間族で冒険者兼薬師のユリシィです」

「しゃべりおった!」


 何かするたびに驚くね。ぺこりとお辞儀すると、下から覗き込むようにノームが首をかしげて、物珍しげにジロジロ見てくるよ。

 私は別に人間族の変異種じゃないよ。普通の人間だよ。


 ノームの身長は土ゴーレムと同じくらい。とんがり帽子をかぶってる分、すこし高いかな。


「ワシはノームじゃ!」


 おっ、自己紹介のお返しをしてくれたよ。どうやら戦闘にならずに済みそうだ。名前は無いのかな。ヒゲが自慢なのか、長くて白いヒゲを撫でつけるようにして見せつけてるよ。


「アンタは薬師か?」


 ここに薬師がやってくることが珍しいみたい。そうだよね、冒険者兼薬師なんて私くらいだし。

 立ってるとノームを見下ろす格好になるので、話しづらいね。ちょっと座ろう。シケクド草もついでに採取できるしね。


「その草、解毒ポーションをつくるやつだな」


 詳しいね。解毒ポーションが欲しいのかな? ここにはポイズンバットもいるからね。毒には気をつけなきゃ。


「あんなコウモリごときにワシらノームが負けなどせんわ! そんなことよりアンタ、中級ポーションはつくれるか?」


 そっちかー。解毒ポーションならなんとかなるけれど、中級ポーションはまだつくれないよ。おばあちゃんの弟子の中でも一番ヘタクソだったからね。

 初級ポーションではだめなのかな?


「ワシの息子がヘタを打ちおってな。ちょいと大怪我したんじゃ」


 それは大変だ。初級ポーションでは効かなかったのかな。うーん、中級ポーションか。道具屋にはめったに売ってないし、あっても高価なんだよね。

 いそいそとシケクド草を採取しながらノームとお話ししていたら、バッサバッサと何かがやってきた!


 赤黒いコウモリ、ポイズンバットだ! 泉の水を飲みに来たのかな、二匹いるよ!


 わわっ、こっちは敵意むき出しだ。いまにも襲ってきそう!


 そうだ、コウモリなんぞに負けんぞ、とか言ってたノームと協力すれば……あれ? さっきまでいたノームは、後はまかせた、とばかりにずぶずぶと地面の土の中に沈んでいくよ。


 そんな手が……。そりゃあ負けないよね! まったく。

 しかたない、一人でやるか。


 こんな広い空間だと飛び回られて不利だ。まず脚力強化して、通路までダッシュで戻ろう。

 このままコウモリが水飲んでどっかに行ってくれればいいけれど――やっぱり追ってきたよ。戦うしかない。


 こちらに飛んでくるニ匹のポイズンバット。

 飛ぶチカチューだから動きは読めるんだけど、巨大コウモリより速いし二匹同時に襲ってきてる。しかも毒を持ってるから慎重に戦うべきだ。


 右手にはすごい短剣を、左手にはコボルドからくすねてきた盾を構えて迎え撃つ。


 チカチューが通るラインに、すごい短剣を添える。

 だけどそれより先に、もう一匹のポイズンバットが上から襲ってきた!


 左手の盾でなんとか防げたけれど、衝撃で短剣の位置がずれて狙いのポイズンバットにも避けられてしまった。


 ニ匹のポイズンバットはそのまま天井へと着地したよ。


 ふふ。甘いね、そこはジャンプで届くんだよ。トウッ! アイタッ!


 わわわ! 魔法ジャンプで斬りかかろうとしたら壁の罠が発動しちゃったよ!

 偶然盾に当たって怪我はしなかったけれど、落ちて尻もちついちゃった!


 そっか、魔法ジャンプするときは、壁の罠に気を配らなきゃだめなんだ。

 壁の罠は魔法仕掛けだから、集中すれば場所はわかる。でも戦いながら動き回って探知はできないよ。


 まいったな、どうするか……。スリングショットに持ち替える隙は無さそう。ゴーレムを出しても届かないよね。せめて一匹なら対処できそうだけど、二匹同時に襲ってきたら防御するしかないよ。


 ん? ヤツらは壁の罠をどうやってすり抜けてるんだろう。飛び回ってるから、危険なはずだよね?

 たしかコウモリは、音の反響を使って位置を把握してるんだったよね。それで壁の罠の位置を巧みに避けてる、ってわけか。


 おっと、考えていたらまた襲ってきた!

 このまま迎え撃っても策がないならジリ貧だ。逃げるべし。どっちに?


 とっさに逃げたら、また広場に戻ってきちゃった!

 広い場所に出て、ポイズンバットは生き生きと縦横無尽に飛び回ってるよ。失敗したかな……仕方ない!


 私は左手に持った盾を、泉に投げ捨てた!

 泉から激しい水しぶきと、ばしゃんと弾けるような水音が立ち上がった。


 うまくいくかは不安だったけれど、効いたようだ。突然の大きな音に驚いて、二匹とも不安定な飛び方になったよ。音の反響に頼ってるなら、逆に余計な音には弱いはずだと思ったんだ。


 一匹は壁の罠から飛んできた矢に羽を貫かれ、もう一匹はふらふらとこちらへやって来た。チャンスだ!


 すごい短剣を振り抜いて一匹。罠に引っかかった方も、落ちてくるのを待って短剣を突き立てて二匹。倒した!

 よし。こいつらも羽が素材になるから剥ぎ取ろう。巨大コウモリよりも高価なはずだ。


 盾を捨てたのはもったいなかったかな、と泉を見たら……何かが浮き上がってきたよ。盾を持った誰かだ! もしかして昔話によくある、女神様かなっ?


「アンタが落としたのはこの小汚い盾か?」

 ……さっきのノームだったよ! 拾ってくれてありがとね!



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