第4話 1-4 日常生活から少し離れてみる。
「疲れただろう?ノーレ。お尻痛くない?」
「……」
お尻?…だから…そう言うところがダメダメなのよ、アヒム。お尻とか。
さっさと馬車を降りて、私のために手を貸してくれる。よしよし。よく覚えましたね。アヒムが差し出した手に、そっと手を乗せる。
私が無事に降りたのを確認して、付いてきたばあやに手を差し伸べて、楽しげに話しながら降りるのを手伝っている。
そうね…一日中馬車に揺られたからお尻が痛いわ。アヒムが気を使って、私とばあやにたくさんクッションを用意してくれたけど、やっぱり痛いものは痛い。お尻をさすったりはしないけど。
途中、アヒムが言っていた湖も見えた。結構大きな湖だ。水遊びもできるらしい。
屋敷の前で、アヒムのお父様とお母様、おじい様とおばあ様がにこにこして出迎えてくださった。
「この子がエレオノーレ。ノーレ、うちのじいさまたちと両親だ」
ずい分とざっくりした紹介ですこと!?!
ワンピースのスカートをつまんで、お辞儀をする。
「今日からしばらくの間お世話になります。エレオノーレ、と申します」
***
「今日は町でお祭りをやっているから、二人で行っておいで。もちろん護衛は付けるけどね」
アヒムのお父様がそう言って、私にもお小遣いをくれた。
「エレオノーレちゃんのお洋服を用意しておいたのよ」
そう言ってアヒムのお母様が、この土地の衣装のワンピースを用意してくれていた。
「ちょっとこっちにこい、アヒム」
おじい様がアヒムに何やらささやいている。隣でおばあ様が笑っている。
兄たちとは年が離れていたので、6歳まで領地にいたと言っていた。こういう環境で育ったのね、アヒム。伸び伸びと…自由に…何も考えずに。いや、褒めてるんだけどね。
「ほら、手をよこせノーレ」
「は?」
「人ごみではぐれるといけないだろう?」
耳を真っ赤にしてアヒムが私の手を握る。
今日はアヒムも地元の子供と同じ衣装だ。白いシャツに赤いベストに黒い半ズボン。そこにハイソックス。
私は黒のひざ丈のスカート。白いエプロンが付いている。走るとふわりとスカートの裾が揺れる。
「うふふっ」
「何笑ってんだよ?」
「初デートね」
「な、な、な、何を言ってるんだ…」
私たちは貰ったお小遣いで豚肉の串焼きを食べ、リンゴのパイを歩きながら食べた。
家庭教師の先生に見つかったら、大目玉を食らいそうだ。
アヒムは大荷物を持ったおばあちゃんの荷物を持って家まで運んであげていた。お礼にキャラメルを貰ったので、二人で食べた。護衛騎士の人にもあげた。
アヒムはこの夏で8歳になった。
こんなふうに、私たちは毎年、アヒムの家の領地で夏を送った。




