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第3話 1-3 相手のことを知る。

「お、お、お…お前の部屋で勉強するのか?」

やる気満々で来たんじゃないの?急に立ち止まってうろたえるアヒムをエレオノーレは冷めた目で眺める。

「そうよ。父上の執務室の方がよかったかしら」

「…いや…それも…」

耳まで真っ赤にしてうつむいたアヒムが、とことこと私の後を付いてくる。


「れ、レディの部屋とか、入っていいのか?」

ドアの前でもまだ渋っているアヒムを振り返って、エレオノーレは言った。

「良いんじゃないの。私たち婚約するんだし。問題あるかしら?」

「お、お、おう。そうだな」


屋敷の二階にある私の部屋は、全体的に淡い桃色の壁紙に緑色の蔦の模様のベージュのカーテン。結構気に入っている。昨日のうちに飾っておいたお人形やぬいぐるみは寝室に移動させた。この子にバカにされるといけないから。勉強机が並んでふたつ。そのほかにソファーセットと暖炉がある。


「な…なんか、いい匂いがする」

「……」


…変態?



***


「で、どうなんだい?アヒム君の勉強は進んでいるのかい?」

「……伸びしろしかないと先生がおっしゃっていました」


夕食時にエレオノーレの話を聞くところによると、アヒム君はかなり苦戦しているようだが、なんとか食い下がっているようだ。


「前日勉強したところを、家に帰ってから復習しているみたいです。くふふっ」


エレオノーレが少し悪い顔で笑った。


「いつまで持ちますかね」

「……」


いやいや。恋する少年を侮ってはいけないよ?エレオノーレ。


「礼儀作法やダンスも始めたんだろう?」

「ええ。あの子は体を動かすのが好きなので、ダンスは問題ないのですが…礼儀作法を身に着けるのはあと100年ぐらいかかりそうですわ」


ぷぷっ。


結局のところ、アヒム君は早朝から夕方までうちにいる。

昼ごはんもうちで食べている。最初のうちは物凄い偏食で、好き嫌いが激しかったらしいが…娘が矯正したようだ。

この前チラリと見たが、

「俺…絶対に長生きするからな」

「はいはい」

そんなことを言いながらアヒム君がほうれん草のソテーを泣きながら食べていた。


…なんで?長生き?



「そう言えば、お父様。夏の間、アヒムの領地に招待されました。2週間ほど出かけてまいりますね」

「ああ、そんな手紙が届いていたね。行くんだ?」

「?涼しいらしいですよ。北部にありますので。湖もあるんですって」

「…行くんだ?」

「?ええ。王都は暑いんですもの。うちの領地はもっと暑いですしね」


キョトンとした顔で、私を見たエレオノーレ。可愛らしい。


それにしても…絶対に行かないと言うと思っていたのに…お父様を置いて行ってしまうんだね?エレオノーレ…。









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