成長
「ふーむ……。魔物肉って、もしかしてプロテイン的な効果があるのかもしれないな」
魔境の森で魔物を倒し、持ち帰るための大きさにしようと解体する。
魔石はマジックバッグなどに使用して容量拡張をしているが、それでもまだ背嚢数個分程度の容量しかない状態だ。
なので、魔物の素材は価値のある部分だけを持ち帰り、傷みやすい肉は森で食べるようになっていた。
そんな生活をしばらく続けていて、なんとなく感じること。
それは、俺の肉体が成長している、ということだ。
もっとも、子どもなのだから、日々体が成長しているのは当たり前だ。
だが、魔物肉をよく食べるようになってから、なんというか筋肉の質みたいなものが違ってきているんじゃないかと感じるのだ。
祝詞を唱えて魔物肉を食べることで、これまでよりも体内に満ちる闘気の量が増えているように感じていた。
それは間違いないと思う。
これまでの通常の食事では一定値以上の闘気が体内にあると、お腹のあたりに沈殿してしまう感じがしていた。
それを消費するためにも、ノクジルアックスなどに積極的に闘気を流し込み、斧も成長するようにしていたのだが、最近は、その上限そのものが引き上げられている気がしていた。
これまでよりも、より多くの気を体内に保有することができるようになっている。
それがなぜだかはわからないが、筋肉が関係しているような気がした。
魔物肉を積極的に食べ始めてから、筋肉が以前よりもしなやかで強靭になってきた気がする。
その結果として、体内に保有できる気も増えたのではないか。
この仮定があっているかどうかはわからないし、今の俺に調べる術はない。
が、最初の発言のとおり、魔物肉がプロテイン的な効果を発揮しているように思う。
俺の血肉になっている実感がすごくある。
「つーか、あれか。今までが全然食べ足りていなかったって説もあるか」
魔物肉が体づくりに欠かせない良い栄養素を含んでいる、のかは定かではない。
が、間違いなく言えるのは、俺の肉体はもっと食べ物を欲しているということだ。
なんせ、生まれた家がど田舎の木こりの家だからな。
家族は皆いい人ばかりで、あの家に生まれたことは良かったことだと思う。
だが、食生活という点でみれば、不足していると感じることはある。
なんといっても、前世では食べ物がたくさんあって、体を作るための栄養素なんて情報もあったからな。
今の家では、豆入りのスープと硬いパンといった最低限の食事で、空腹を紛らわし、日々の生活を続けるというのが基本だった。
だからこそ、俺は子どもながらに仕事をして、食べ物を自分でも買っていたんだ。
だが、どうしても肉類は圧倒的に足りていなかった。
それが、この魔境の森では得ることができる。
この森の魔物は、人間を見つければ向こうから襲ってくる。
普通ならば動物は人間を見れば警戒して近づかないものだが、魔物に関しては逆だからな。
もちろん、その魔物に俺が肉として食われてしまっては意味がないが、こちらが倒した場合にはその魔物の肉をしっかりと食べてあげる必要があるんじゃないだろうか。
「でも、これからはストレッチとか柔軟はもっと積極的にやろうかな。子どものうちから変に筋肉がついて、それが原因で成長が阻害されても嫌だしね」
実際のところどうなんだろうか。
筋トレしまくっているわけじゃないから大丈夫だとは思うが、魔境の森を毎日移動し、斧や鉈を振り、魔物と戦う生活を毎日のように繰り返している。
ブレナンたちがいなくなってからは、鍛冶屋にもたまにしか行かなくなっているので、毎日が肉体労働だ。
だからこそ、体の手入れだけは怠れない。
そう考えた俺は、魔境の森で魔物を倒し、その肉を食べて筋肉をつけながら、毎日夜にはしっかりとしたストレッチをしながら内気功を重点的に行い、しなやかな筋肉と流れるような気の動きを手に入れられるように努めることにしたのだった。
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