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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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撤退

「これは……、どうしようもないね。撤退しよう」


 魔境の森の奥深くでのゾンビ犬との遭遇戦。

 それを終えてからもさらに探索を進めたブレナンパーティーは、その後もアンデッドの存在を確認した。

 アンデッドとなっていたのは犬だけではなかった。

 火狐も突撃猪もそのほかの魔物たちもゾンビとなった姿が確認されたのだ。

 虎や熊のような大型の魔物までアンデッドとなり、それ以上に危険そうな魔物の姿も見えた。

 そして、質の悪いことに、生者である魔物と不死者であるアンデッドが共に行動している姿もあった。

 そう、それはアンデッドでさえ魔王種の影響を受けているということだった。


 通常は同種でしか群れないはずの魔物が、異なる種の魔物と共存して人間に襲い掛かる。

 これは、人類から見ると危険度が跳ね上がる。

 が、そこにアンデッドまで含まれるとさらに大きくリスクが上昇する。

 可能な限り、アンデッドからの攻撃は受けないように戦闘を進めなければならないが、遭遇した魔物の群れとの関係では、近くにいる非アンデッドを先に攻撃していく必要だってある。

 そうなると、後方から傷を恐れず突っ込んでくるアンデッドが厄介になる。

 相手は痛みも死も恐れないからだ。

 また、通常であれば臭いや音などで近くの人間の気配を探すことの多い魔物とアンデッドは別の動きをすることもある。

 生者の気配でも感じ取っているのか、生きていた頃とは行動パターンまで変わっているようだった。

 夜の闇にもかかわらずに近づいてきたときには、本当にホラー映画のようだと感じてしまった。


 さらに、この魔境の探索を困難にしているのはアンデッドの存在だけではない。

 もともと俺が同行するきっかけとなったトレントがいることも、リスクを大きく上げていた。

 はっきり言って、あの後もさらに奥地まで探索を進めることができたのは、俺がいたからだと自分でも思う。

 アンデッドが含まれたことで行動パターンの変わった魔物を警戒する索敵担当のバードは、もはや周囲に無数に乱立する木々の中にトレントが含まれているかどうかまでを見極めることが難しくなっていたからだ。

 俺とバードが索敵に集中し、可能な限り魔物の群れから離れるように行動したからこそ、奥まで進めたといってもいいだろう。


 ふいな遭遇を避けるための絶え間ない緊張感の続く索敵と、遭遇した時の戦闘、さらには昼夜問わず襲われる可能性のあるリスクの中での精神的な負担。

 このパーティーはそんな限界状態の中でも動き続けた。

 ブレナン率いるこのパーティーの実力と運。

 その二つがあったからこそ、俺たちは五日もの間、生き延びて魔境の奥までたどり着けたのだろう。

 そして、俺たちはそこで見つけた。

 この探索の真の目的である魔王種を発見することができたのだ。


「撤退ですか? ここまで来て? 次にもう一度、同じように探索したとしてここまで来られるかどうかはわかりませんよ、ブレナン様。それに、あの魔王種が次に来た時にもここにいるかどうかも不明です」


「分かっているよ、ライゼル君。だけど、撤退だ。問答している時間はない。全員、ここから離脱するよ」


 誰よりも魔王種を見つけることを考えていたブレナンが、撤退を表明する。

 その言葉を聞いて反対意見を出した俺だが、それはあっさりと却下された。

 この場にいる俺以外の全員は、ブレナンの指示に従い、これまで来た道を引き返す。

 そうなると当然俺もそれに続くしかない。


 確かに、ここで魔王種と戦えというのは無謀だろう。

 森の奥には少し開けた場所があった。

 そして、そこには魔王種だとはっきりわかるほどの存在感を発揮する魔物がいて、その周囲には数多くの種族の魔物が群れていた。

 異なる種族の魔物を従える王。

 ――あれこそが魔王種だった。

 魔王種と最初に呼んだ人も、きっと同じような光景を見たに違いないと思う強烈なシーンだった。


 だけど、どうするんだろうか。

 大きな広場に数百体という魔物が群れていた。

 勢いで反論したものの、俺にもあれを倒す方法など思いつかなかった。

 ここで撤退して、仲間と装備を整えて再び戻ってきたとして、魔王種を討伐できるのだろうか。


「あれはね、倒せないよ、少年。ブレナン様はここで降りるよ」


「……え?」


「この撤退は魔境探索と魔王種討伐の中止ということ。少年はどうするの? あの村にいたらそう遠くないうちに魔物たちに襲われて村は滅ぶ。私と一緒に来る?」


 誰もが無言で道なき道を引き返す中、最後尾を移動していた俺にレイラが話しかけてくる。

 探索の中止?

 魔王種討伐は諦める?

 ブレナンの撤退発言の意味ってそういうことだったのか?


 レイラの一言があまりにも突然で、思考が止まる。

 俺はすぐにはなにも返せなかったのだった。

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― 新着の感想 ―
崩壊エンドかな?更新お疲れ様です。
村捨てる程のヤバさか
周囲に数百体の魔物を従えた魔王種かぁ。 ブレナンの判断は間違いないものだよなぁ。 そして間違いなく現在のライゼルには手に余るよなぁ。 開拓村にいる冒険者が総出でかかっても相当な被害が出るだろうし… ラ…
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