お宝回収
「すごいね、レイラ。あんな攻撃力のある魔術が使えるんだ。魔王種を倒すにはレイラの力が絶対に必要だね」
「ふふふ。そうでしょ。私にかかれば、魔物なんて余裕」
「そうかもしれないね。でも、大丈夫? 疲れてない? レイラは秘密兵器なんだから、いざというときに力を残しておかないと。トレントみたいな雑魚相手に魔術を連発して消耗してたらもったいないよ」
「ん。そうね。わかった。これからはもっと強い相手に備えておく」
トレントが倒れた近くでレイラと話す。
なぜだかわからないが、この十代半ばの少女は俺にいいところを見せようと妙に張り切っている。
それ自体は別に構わないのだけれど、さすがに魔物が出る魔境で自分勝手な行動に出るのはまずいだろう。
おそらく、このパーティーであればまだ余裕のある探索なのだろうけれど、それにしたって危ない行為だ。
なので、ブレナンに注意される前に、俺からも軽く釘を刺しておく。
これがどこまで効果があるかはわからないけれど、これからは魔術について適度にレイラと会話してそのすごさを素直にほめてやれば落ち着くんじゃないだろうか。
まあ、その前にパーティーリーダーのブレナンがこめかみに血管を浮かび上がらせてレイラのもとに近づいてきて、容赦なく説教を始めた。
仲間を危険にさらす行為についてブレナンが注意を行う中、俺はその場を離れてトレントのもとへと行く。
地面には、幹の中ほどをえぐられ、へし折られた巨木が横たわっていた。
木こりの視点からすると、これはもう破壊行為に他ならないな。
木材の価値は大きく目減りすることだろう。
「トレントも魔物だから魔石があるのかな?」
「ああ。ここを見てみな。レイラさんの魔術が強力で吹き飛ばしかけていたけど、ギリギリ残っているよ。トレントは、幹に浮かぶ人面の眉間から少し下あたりに魔石があることが多いんだよ」
倒れたトレントを見て、魔石の場所について考えていると、運び屋ギーグが教えてくれた。
彼はこのパーティーで荷物を運んだり、飲み水を魔術で出したり、いろんなことをする。
戦闘能力はないようだが、そのほかのことはなんでもこなすギーグは、魔物の解体にも詳しい。
そして、このパーティーでもすでにトレントと遭遇して勝利したことはあったためか、魔石のある位置についても知っていたようだ。
ストーンバレットを二発食らってえぐられた場所は人面樹の顔部分だったが、運のいいことに魔石は回収できた。
人面模様の眉間より少し下に大きめの魔石があったのだ。
やはり、木の魔物であっても魔石というのは得られるんだなと、俺は新たな知見を得ることができた。
「トレントの素材ですけど、もらってもいいですか? 一応、今回の探索に同行する条件として、トレントを倒した場合に俺が持ち帰ることができる分は持って行ってもいいって、ブレナン様に許可を得ていますが」
「うん、大丈夫。その話は俺も聞いているから。そうだな。それなら、解体作業を少し手伝ってもらおうか。俺たちもトレントの素材は一部持ち帰りたいし、そうだな、枝を切り落とすのをやってもらってもいいかい?」
「了解。木こりらしいところも見せとかないとですしね。じゃあ、大きめの枝から落としていきますね」
よかった。
もしかすると、今後はトレントがいることに気が付いても戦わずになるべく回避しながら進むかもしれない。
そうなったら、トレントの素材を手に入れられる機会がなくなるところだったが、今回倒したトレントから得られる素材の一部を俺が持ち帰ってもいいと言ってくれた。
ま、彼らは基本的に荷物を持つのが運び屋ギーグのみだ。
そして、彼は大きな背負子や鞄を背負ってはいるものの、マジックバッグのようなものは持っていない。
つまり、無尽蔵に荷物を持てるわけではないため、大木であるトレントの素材は余らせてしまうことになる。
価値の高い部分は先にブレナンパーティーの所有物として持って行かれてしまうだろうけれど、小から中程度の太さの枝なんかは俺が持ち帰ってもよさそうだ。
というか、このトレント、本当にカエデの木っぽいな。
つーか、メイプルか?
ストーンバレットでえぐられた部分から樹液がにじみ出ていて、ほんのり甘い香りがした。
……こいつも持って帰るか。
俺はギーグが水を出せるのを頼りに、自分用の水筒の中身を飲み干して、そこにトレントの樹液を入れて回収もしたのだった。
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