安定感のある戦い
魔術師レイラに手を引かれて森の中を歩く。
雪が解けて春になってからは、ブレナンたちをはじめ、多くの探索者がケイオス村へやって来た。
その影響で、俺は鍛冶屋の仕事を手伝うことが多くなっていた。
だから、話には聞いていても自分では見て確認していなかったこととして、魔物避けの効果範囲内にある森に道ができていた。
整備された道ではなく、多くの人間が歩いたことでできた道なのだろう。
このあたりの森は木こりで構成される材木ギルドにとっては仕事場でもあり、自分たちが管理する資源の場でもある。
魔物を倒すためによそから来た探索者たちが、この森を荒らすことは困るということでギルマスが話を付けたからだろうか。
探索者たちはなるべく同じルートを通って魔境に入るように要請した結果、注連縄を越えるまでの道が出来上がっていたのだ。
木を伐って材木を持ち帰る木こりのためのルートとも少し違うが、歩きやすくなった道中は特に魔物が出ることもなく、俺はレイラと手をつないだまま注連縄までたどり着いた。
ここまでの道中はそんなふうに移動できたが、それでもこのパーティーの実力は高そうだというのは感じ取れた。
注連縄までは魔物が出てこないことが多いとはいえ、決してないというわけではない。
なので、無警戒に道を歩くわけではなく最低限の警戒をして安全確保をする必要がある。
たまにすれ違ったほかの探索者たちはベラベラとしゃべりながら歩いている連中もいたが、ブレナンが率いるこのパーティーはしっかりと索敵担当の男性が少し前を歩いて状況をクリアリングしながら先導して無駄口をたたかず進んでいた。
むしろ、この中で異分子の俺のほうが移動の流れを遮ってしまっていたかもしれない。
時々見つける薬草やキノコなどを採取するために声をあげ、少し道を外れて採取したりもしたからだ。
進行を妨げて怒られないかとも思ったが、昨日話を取り決めていたからかブレナンが改めてメンバーに俺の採取の許可を出していることを言ってくれて、俺は問題なく薬草を集めることができた。
この魔境探索の特需がいつまで続くかはわからないが、採取した薬草は土を付けた根っこごと持ち帰ろうと思う。
村へ持ち帰って地植えし、薬草を栽培できないか試してみるつもりだ。
これまでは自分が飲むために必要だったから森に入って採取するだけでも十分だったけれど、今みたいに探索者に売るなら自分で育てたほうが質と量を高められるかもしれないからだ。
というわけで、いくつもの薬草を栽培用に確保することができた。
だが、それもこの注連縄を越えたら魔物が出やすいのでできないかもしれない。
ここからは手をつながずに歩こうと、レイラとつないでいた手を離し一人で歩く。
「……ん。まだつないでいてもいいのに」
「ここからは自分で歩くよ。それより、魔物が来たよ。前方から火狐、かな? 数はおそらく三匹」
「なに? バード、本当か?」
「ちょっと待ってくれ。……確かにいるな。魔物の気配あり。戦闘準備」
注連縄を越えたとたんに魔物のお出ましだ。
俺は森を歩くときに内気功・迷彩を行い周囲に溶け込むようにしているが、目や耳に闘気を集めての情報収集もしていた。
そのおかげか、いち早く魔物の接近に気が付いていた。
手を離したことでレイラは少し残念そうにしたが、さすがに魔物との戦闘があるなら両手は空けておくべきだろう。
俺が魔物接近について報告し、索敵担当のバードもそれを認め、すぐに戦闘が始まった。
バードが弓を引き絞り、矢を放つ。
狙い違わず、見事に命中。
火狐の一匹は魔法を放つこともできずに脳天を貫かれて絶命した。
だが、残りの二匹は健在で、倒れた一匹のことを悲しむこともなくこちらに走り寄ってくる。
バードが二度目の矢を放つが、それは火狐が放った火の魔法とぶつかり、今度は相手に当たることなく燃やされた。
「どりゃあ!」
そこに金属製の盾を持つタンク役のドランが立ちはだかる。
それなりに重量があるであろう盾を片手で持ち、前方に掲げながら走り寄って、盾を武器のようにして火狐を殴りつけた。
一匹はそれで後方に吹き飛ばし、もう一匹もけん制して動きを鈍らせる。
そこにブレナンとリーリーが走り寄った。
リーリーは双剣を持つ女戦士だ。
リーチは短い武器だが、その二本の短剣を振りながら三匹目の火狐の足を切り付けて、そこに反対側からブレナンが本命の攻撃を行い仕留める。
胸を貫かれた三匹目の火狐はそれで息絶えて倒れ伏す。
最後に残った二匹目の火狐は盾で吹き飛ばされたものの起き上がりこちらを見るが、相手にするのは盾でのガードをしっかりと構えた大男と弓で狙う索敵係、そして武器を構えた二人の戦士だ。
火を放ちなんとか状況を打開しようと試みるも、その魔法も金属製の盾の前には火力が足らなかったのか完全に防がれて勝負は決した。
あっという間に戦闘は終了した。
すごい安定した戦い方をするんだな。
ブレナンパーティーの戦闘を見るのは初めてだったが、なんというか安定感があった。
これなら、事故って誰かが怪我をすることも少ないだろうと思わせる戦いぶりだ。
だけど、魔術師レイラは何もしてないけどいいんだろうか?
戦闘が終了し、俺が彼女のほうを見ると何を勘違いしたのか、再び手を握るために俺に手を差し出してきたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




