探索者たち
「ふん。ずいぶんと物々しいこったな」
ケイオス村にある材木ギルドのギルドマスターがつぶやく。
ギルドの材木置き場でギルマスの近くにいた俺はその声を聞いて、ギルマスの視線を追うように遠くを見る。
そこには武器を持ち、鎧を身にまとった者たちが何人もいた。
あれが探索者というやつなのだろう。
村にある魔物避けの効果範囲を超えた先にある魔境を探索するために、村長が呼び寄せた連中だ。
もしかすると魔物避けの効果が弱まっているかもしれない。
あるいは、魔物避けの効果は健在であってもそれをものともしないような影響力のある魔物が魔境に誕生したかもしれない。
どうしてもそれを調べるには、注連縄を越えてさらにその先を探索しないといけなかった。
村長が取るべき手段は二つ。
魔境での活動経験が豊富な探索者を呼び寄せて調べてもらうか、あるいはこの村を統治する貴族に願い出て調べてもらうかだ。
どうやら、村長が取ったのは後者の選択肢だったようだ。
ケイオス村を含むこのあたりには領地を支配する男爵様がいる。
バラスト男爵という貴族家があり、俺たちはバラスト男爵領の村民というわけだ。
この男爵家には貴族当主を継ぐわけではない男児がいる。
バラスト男爵家三男のブレナンという人物だ。
そのブレナン様がバラスト男爵家配下の者と探索者を連れて調査に来たのだという。
ガウェイン先生が言うには、ブレナン氏はここで一旗揚げたいと考えているんだろうとのこと。
魔物が住む土地は人類の支配地域ではない。
そこに新たに魔王種が現れたとして、その魔王種を倒すことができれば彼の立場からすると非常に喜ばしいことなのだそうだ。
貴族の一員として生まれているだけでも十分に勝ち組だと思うのだけれど、貴族からすれば三男というのは立場が弱い存在だ。
当主になることもできず、普通ならば勉強を頑張り、貴族家で働く人材となるくらいしか道がない。
だが、鍛え上げた肉体と貴族が持つ武器を手に魔王種を倒せば、土地を手に入れられることになる。
自分の力で未来を切り開き、新たな領地を手に入れられるかもしれない。
もちろん、その場合は男爵家から領地経営を支える人材を紹介してもらえるのだろう。
ブレナン・バラストからすれば、ケイオス村の村長からもたらされた情報というのは喉から手が出るほどに求めていたものだったようだ。
だからこうして雪解けすぐに辺鄙な村にまでやってきたというわけだ。
だが、どうやらその情報は男爵家だけで留まっていたわけではないらしい。
ほかにもある程度知られていたようだ。
ケイオス村の近くにある魔境に魔王種が誕生した。
その情報はそれなりに広まり、実際に男爵家から三男坊とはいえ貴族家の一員が動いたことで信憑性がグッと増した。
これにより、噂を聞きつけた者たちも集まってきたのだ。
つまり、なにが言いたいかというとこれまでのどかな村だったケイオス村にはブレナン一派以外にも探索者が集まり始めているのだ。
鎧を着こみ、武器を持った連中が。
材木ギルドでもギルマス以外がひそひそとしゃべっていた。
その内容は決してよそから来た探索者に対して好意的なものばかりではなかった。
よそ者が来た不安が内包された、どこか排他的な雰囲気を村人たちから感じてしまう。
だが、それを大っぴらに出すわけにはいかない。
まだ、魔王種がいると決まったわけではないのだ。
その姿すら確認されていない。
探索者たちにはしっかり魔境を調査してほしいというのは、村民たち全員が持つ願いでもある。
そんな村人たちの警戒と期待が入り混じる中、ケイオス村には日に日に探索者の姿が増えていったのだった。
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