洗浄作業
これまでにも、俺は森の中で小動物などを仕留めて持ち帰ることがあった。
それは、内気功・迷彩を使えるようになってからのことだ。
森の中で周囲の状況に合わせて俺の気を同調させることで存在を気が付かせにくくなり、それによって不用意に近づいてきた動物を仕留めることもあった。
そのときにも、動物を持ち帰ったことはある。
が、その時は基本的に俺の目当ては肉にあった。
動物性たんぱく質が取れることがなによりのお宝だった。
けれど、今回は違う。
俺が今回倒したフクロフクロウという魔物の一番の価値はその胴体についている袋状の皮膚にある。
「まずは、毛皮をはがすところからじゃな。この袋の部分は加工する際には絶対に破ってはならん。もしも、一部であっても破れてしもうたら、中身を多く入れられるという働きが失われてしまうんじゃ。なので、ナイフはお腹に直接入れずに脇から入れる。こうして、下の脂肪も多くついた状態で剥いでいくほうがいいじゃろうな」
ノクジル爺さんと一緒にフクロフクロウから容量拡張機能付きの鞄を作る。
そういう話にはなったものの、基本的には作業の多くをノクジル爺さんが行い、俺はその手ほどきを受けつつ手伝いを行うという形で作業が進む。
俺に分かりやすいように説明をしながらも、ノクジル爺さんの手さばきは速く正確で、どんどんと進行していく。
「毛皮の下にそんなに脂肪分が多く残っていてもいいの? あとで腐ったり、臭いが残りそうだけど」
「普通はそうじゃ。じゃが、このほうが確実に袋を残した状態で皮を剥げるからのう。脂肪分は後からでも落とせるから、作業の手間は増えるかもしれんが、このやり方のほうがいいんじゃよ。貴重な魔物素材を使って失敗したくもないしの」
そんな話をしながら、ノクジル爺さん作のナイフできれいにフクロフクロウから毛皮をはぎ取るのを見つめる。
うーん。
やはり、このおじいさんは技術があると思う。
ノクジル爺さんからすれば、いつもよりも多めに毛皮の下にある脂肪を残しながら剥いでいるのだろうけれど、多分俺がやるよりも薄い。
まだまだ皮を剥ぐ経験の少ない俺だと、場所によって薄すぎたりぶ厚すぎたりしそうだしな。
鍛冶師とは思えないほど見事な手際で、フクロフクロウの体はまるごと剥がされていった。
「こうして、脂肪を残した状態で剥いだら、次は丁寧に良く洗う。これはライ坊に頼もうかの。冬で冷たいとは思うが、熱いお湯を使ってはならんぞ。手が冷たくとも水でよく毛皮を洗い、脂肪を落としていくのじゃ」
「おっけ。そういうのは得意だよ。任せて、ノクジルさん」
毛皮を剥ぎ終えると、次は洗いの工程に入る。
これについては、俺のほうがいいだろう。
外気功・属性強化で水の冷たさはいくらか軽減できるから、そんなに苦にはならない。
俺は作業を引き継いで、井戸からきれいな水を汲み上げてそれを使い、毛皮を丁寧に洗った。
そして、その毛皮を今度は薬品に漬け込む。
これは洗浄作業で残った脂肪分を分解すると同時に、毛皮表面の質を高める効果がある。
フクロウの体に生えていた毛の内側にある皮膚でできた袋。
いろんなものが詰め込まれていたことで入っていた物も汚れていたけれど、袋自体もかなりの汚れがあった。
柔らかい皮膚を傷つけないよう注意しながら、薬品を丁寧に染み込ませて、さらに洗浄とコーティングを行う。
そうして、きれいになった毛皮を広げて乾かす。
ここでしっかりと乾かさないとカビが生えたりもして、状態が悪くなるそうだ。
慌てずじっくり乾かすことが大切らしい。
今日の作業はここまでだった。
乾いたら、ここからはその革をうまく鞄にする作業が必要だ。
どんなものが出来上がるだろうか。
ワクワクしながら、俺はいったん自宅へと戻ったのだった。
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