袋の中身
ノクジル爺さんがフクロフクロウのお腹にある袋からいろんなものを取り出して並べていく。
いくら胴体の太い魔物だといえ、そこから出てきたものはどう見ても元の袋の容量をはるかに超える量だ。
すごいな。
どれだけこの袋には物が入れられるんだろうか。
「ん? こいつも氷菓樹の実を食べるんだね。……て、これまだ冷たいよ。いつ採ったやつなんだろ?」
フクロフクロウのお腹にある袋から取り出されたものは非常に雑多なものだった。
そのなかに気になるものがあり、目が留まった。
それは、俺も今日採取していた氷菓樹の実だ。
スノーゴーレムと同様にフクロフクロウまで俺と高級スイーツを取り合う競合相手なんだろうかと思って、その実を手に取ってみた。
そして、気づく。
この実がまだ冷たいということに。
どういうことだろうか。
袋の中は見た目以上の容量をしているようだが、決して四次元ポケットのようにはなっていないみたいだ。
氷菓樹の実以外にも木の実や何らかの動物の肉なども一緒に袋の中に詰め込まれていたようで、どれも基本的には汚い印象を受けた。
当然、氷菓樹の実も汚れていたのだが、それでも何度も採取してきた俺の経験からすると、この実は採取されて袋に入れられてから数日は経過しているように思う。
氷菓樹の実は非常においしくて冷たく、さらには薬効まで期待できる食材ではあるのだけれど、フルーツのようなものの宿命とでも言おうか、あまり日持ちはしないのだ。
特に、食べたときに感じられる樹液が滴るようなジューシーさと冷感は割とすぐになくなってしまう。
少なくとも、数日前に採れた氷菓樹の実が、手に持っただけで分かるほど冷たいままなんてことはないはずだ。
「ねえ、ノクジルさん。もしかして、このフクロフクロウの袋の中に食品を入れておいたら日持ちしやすいとかってあるのかな?」
「そうじゃよ。ライ坊の言うとおり、この袋には物を長持ちさせる働きがあると言われておるの。食べ物だけではなく、いろんなものに効果があるらしいのじゃ。例えば、鉄で作った釘なんかを袋に入れておくと錆びずに長持ちする、なんて話もあるようじゃな」
「すっげー。どういう原理でそうなってんだろう。ま、それはいっか。お願い、ノクジルさん。俺、この袋を使って鞄を作ってみたい。ノクジルさんは鍛冶師だけど、革加工とかはできる?」
「ふぁっふぁっふぁ。誰にものを言うておるんじゃ。村の鍛冶屋が鉄だけを売って仕事になるわけなかろう。なんでもやってこそじゃ。当然、革を加工することだってできるぞ。まあ、それでも専門家に頼むのが一番じゃとは思うが、どうする、ライ坊? わしと一緒にこいつを加工してみるかな?」
「お願いします、師匠。もう一回狙ってフクロフクロウを胴体に傷一つつけずに仕留めるなんてこと、できるかわかんないから、この機会を逃したくない。俺にフクロフクロウから鞄を作るやり方を教えてください」
「よかろう。なら、倉庫から革加工用の道具を持ってこようかの。わしもこんなに状態の良い魔物素材を相手に仕事をするのは久しぶりじゃから腕が鳴るわい」
やったぜ。
ノクジル爺さんは鍛冶師であるけれど、同時に何でも屋でもあったみたいだ。
フクロフクロウの袋から鞄を作ることもできると言う。
ならば、やるしかない。
容量拡張効果のある鞄なんて、前世では存在すらしなかった代物だ。
ここで逃すなんてことはできない。
俺は仲良くなってからは気安く話していたノクジル爺さんに頭を下げて頼みこみ、鍛冶師ノクジルもそれに答えた。
こうして、俺とノクジル爺さんはフクロフクロウの素材から鞄づくりを始めたのだった。
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