価値
「こりゃすごい。大物だな、ライ坊」
魔境の森で俺が倒したフクロフクロウ。
その体を俺は持ち帰ることにした。
雪でできたスノーゴーレムは倒してもその核となる魔石くらいしか価値がなさそうだったが、こいつは違う。
が、どの部分が価値を持つのかがわからないため、俺はそのフクロフクロウの死体を丸ごと引きずって持ち帰ってきた。
俺が一抱えする必要すらある大きさの胴体を持つフクロウの魔物。
首を落とされたフクロフクロウの死体からは大量の血が流れていたが、今はもう止まっていた。
正直、村に帰り着くまで気が気ではなかった。
森の中を血まみれの魔物を引きずって歩くなんて、本来なら自殺行為に近い。
普通ならそんなことは絶対にしないだろう。
だけど、俺は今回その危険な行為を行い、奇跡的に無事に帰ってこられた。
といっても、帰ってきた先は村の端にある鍛冶屋だった。
鍛冶師の師匠であるノクジル爺さんの住む鍛冶屋へと俺はフクロフクロウの遺体を持ち込んだのだ。
「ノクジルさんはこの魔物って見たことあるの? 俺が読んだ本だとこいつは確かフクロフクロウって書いてあった気がするんだけど」
「ああ、知っておるよ。ライ坊はよく勉強しているな。こいつは確かにフクロフクロウじゃな。ライ坊が倒したのか?」
「うん。ノクジルアックスは魔物にも通用したよ。さすがノクジルさんの斧だね」
「無茶をする子じゃな。怪我はしとらんじゃろうな?」
「ありがとう。大丈夫だよ」
「ふむ。ならばいい。それよりも、これはすごいお宝じゃよ。特に首できれいに切って倒しているのが最高じゃ」
俺が鍛冶屋に持ち込んだフクロフクロウの遺体を触りながら、あちこち確認してノクジル爺さんがそんなことを言う。
確かに、自分でもうまく倒せたと思う。
胴体なら毛皮が採れるだろうし、羽から羽毛なんかも手に入るかもしれない。
が、ちょっと予想外でもあった。
フクロフクロウが攻撃するときに嘴に闘気を集中させているように見えたからだ。
なので、もしかすると嘴にも価値が付くかと思って、重たいのに頭部まで持ってきたのだがノクジル爺さんはほとんど胴体しか見ていない。
「こっちはあんまり興味ない感じ?」
「頭か? まあ、きれいに首を切ったみたいじゃから、うまく処理して標本にでもすれば、金持ちが買うかもしれんな。じゃが、そういう相手に伝手でもなければ、商人も買い叩いていくかもしれんからのう」
「価値が付くかもしれないけど、やってみないと分かんないってことね。オッケー。でも、胴体はそうじゃないってこと?」
「うむ。……というか、知らずに持って帰ってきたのか?」
「本にはそこまで詳しいことは書いてなかったんだよね。こいつは魔物だし、毛皮や羽毛や肉なんかが売れるかなとは思ってたんだけど、食べられるの?」
「まあ、食えるじゃろう。が、それよりも、ここじゃ。フクロフクロウの体で一番価値があるのは、この腹部にある袋じゃて」
そう言って、ノクジル爺さんが血で汚れた胴体をゴソゴソ触り、袋の中身を検める。
木の実や小動物の死骸、食べかけの肉などが次々と出てくる。
結構グロイというか、汚いな。
どんだけ食い意地張ってるんだ、こいつは。
「……え? どうなってんの、それ? なんか見た目以上にいろんなものが出てくるね」
「そうじゃ。フクロフクロウの最大の魅力は何と言ってもお腹の袋に多くの物を入れられる点にある。こいつをうまく切り取ってやると、見た目以上の容量のある鞄ができるんじゃよ。上物ともなれば、とんでもない値が付くお宝じゃな。しかも、買いたたかれることはほとんどない」
……マジで?
なんでそんな重要なことを本は書いてなかったんだよ。
つーか、それってマジックバッグみたいなものだよな?
初めての魔境探索で倒した魔物からとんでもない代物が手に入りそうだと知って、俺は非常に驚かされたのだった。
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