探索範囲
両親や家族には村長やガウェイン先生と話した内容については一切言わず、それまでと同じように俺は生活を続けた。
冬の間、晴れた日は学校や鍛冶屋に行き、雪が降ると森に入り氷菓樹の実を採取しにいく。
体調が悪かったじいちゃんも氷菓樹の実をうまいうまいと言いながら食べて、今のところは落ち着いている。
今の感じだとこの冬を越すこともできそうに思う。
それはそれとして、森に入るとやはりスノーゴーレムと遭遇することは続いていた。
魔王種が本当にいるのかは、正直まだ判断がつかない。
魔物避けの範囲内である注連縄より内側エリアにもさまざまな形の雪の魔物が登場するのだが、別にほかの魔物がスノーゴーレムと一緒になって襲ってくるわけではないからだ。
さまざまな魔物が一緒になって襲ってくるようなことがあれば、さすがに村長もすぐに動くだろう。
というか、そんなことになれば森に入っている俺が無事に済むかどうかは非常に怪しい。
そうなっていないという点でも、村長やその周辺の人たちは大丈夫なんじゃないかと考えているらしかった。
だが、俺は魔王種とは別の問題にぶつかっていた。
それは、氷菓樹の実の採取の効率が落ちてきているということだ。
これまでも、雪の降る中を歩き回り探してきた極上のフルーツだが、それが一日で見つけられる数が減ってきている。
理由は単純だ。
近場にあったものを、だいたい採り尽くしてしまったのである。
雪の降る日だけに花が咲き実をつける氷菓樹だが、ゲームのように一晩たてば採取地点に新たにリスポーンして再び採れるなんてことはない。
氷菓樹のてっぺんに実る果実は一度採取してしまえば次にいつ採れるかわからず、定期的に様子を見に行っているのだけれどたいてい無駄足になってしまう。
また、スノーゴーレムも氷菓樹の実を狙っているみたいだから、俺が知らない間に俺が採取していない実を持って行かれていることだろう。
森の中で地図を広げる。
俺が自作したケイオス村周辺の森の地図だ。
どこに氷菓樹があり採ったかを、歩数をもとに、おおよその距離を割り出して描いたものだ。
改めて確認しても、魔物避けの範囲内である注連縄内側のエリアではもうないんじゃないかと思えてしまう。
それというのも、氷菓樹はなぜか密集して生えているわけではなく、点々としながらあるようだからだ。
少なくとも村の近くで群生しているような感じではない。
どうしようか。
これ以上、氷菓樹の実を求めるのであらば方法は一つしかない。
魔物避けの範囲内を越えてさらに外側まで探索に向かう。
おそらく、それをすれば俺が見つけていない氷菓樹は見つかることだろう。
だが、当然その選択にはリスクが伴う。
スノーゴーレムはもちろんのこと、そのほかの魔物とも遭遇するリスクがあるからだ。
……どうしよう。
できることなら、もう少し氷菓樹の実を確保したい。
じいちゃんのためにも、俺のためにも。
ただ、魔物がいるというのが問題だ。
さすがに食欲を優先して命を懸けるのはちょっとどうなのかと自分でも思う。
が、たいした娯楽がないこの村での生活で、前世でも食べたことが無いようなおいしいスイーツである氷菓樹の実はどうしても魅力が高すぎた。
食べられる時季が決まっているのもある。
今しか食べられない限定品――そんな言葉に弱いのは前世から変わらない。
ちょっとくらいいいよな?
注連縄だって、別にあれ自体には効果はない。
魔物避けの効果範囲のおおよその目安に村人が森の中の木々に縄を張っただけなのだ。
それをちょっと越えて氷菓樹の実を探すくらいなら、リスクはそこまで変動しないんじゃないだろうか。
高級スイーツの魅力に負けた俺は、少しだけと心の中で呟きながら、探索範囲を広げてみることにした。
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