探索者
この地を支配していた魔王種を倒して、その遺骸から魔物避けを作り上げる。
魔物の種族関係なく従える強い魔物のことを魔王種と呼ぶのだそうで、おそらくはそいつらの強いオーラというか雰囲気を死した後も残すものが魔物避けなのかもしれない。
まるで、死んだ後もこのケイオス村には超強力な魔物である魔王種が健在であるかのように錯覚し、それに周囲の魔物が怖がって近づかない。
魔物避けの原理はこんなところか。
だからこそ、その効果が切れるか、あるいはほかに強力な魔王種が誕生すれば、魔物避けがあってもケイオス村に魔物が近づく可能性があるのだろう。
今のところ、俺がスノーゴーレムと遭遇した理由ははっきりとはわからない。
この手のことに詳しい専門家などに調べてもらう必要があるのかもな。
そのことをガウェイン先生に聞くと、調査については二つのパターンがあるのだそうだ。
一つは、周囲の土地を治める貴族、あるいは騎士が調査を行うケース。
普段は税を取り立てるくらいしかしてこない貴族や騎士などがこのあたりにはいるのだけれど、有事の際には彼らが働くのだそうだ。
土地を領有している連中にしても、魔王種の出現とそれによる領地への被害はさすがに無視できないものがあるのだろう。
このケイオス村は騎士領に含まれる村ということで騎士様に村長が話を持って行くことになる。
が、騎士が動いて調べるとなると、従士たちを率いて小規模とはいえ軍勢を伴って現れる可能性がある。
そして、その時には調査依頼を出したケイオス村も食料の提出や金銭の提供を求められるかもしれない。
魔王種がいるのかどうかもはっきりとわからない段階で、そんな調査依頼を出せば、見つかるまでに相当な支出がありながらも、「結局は何もなかったので今後も様子を見ることとする」というオチになるかもしれない。
俺のような子どもが見たものを根拠にそんなことをしていたら、こんな辺鄙な村などすぐに立ちいかなくなってしまう。
なので、調査のやり方としてはもう一つのパターンが取られることが多いのだとか。
もう一つは探索者へ依頼する方法だ。
この世界には魔物との戦闘経験があり、魔物がはびこる森などのフィールドに入り活動している探索者と呼ばれる連中がいる。
そいつらは、普段、魔境の中にある拠点に住み、そこで周囲の魔物を狩り、稼ぎを得ているのだそうだ。
そういう連中の中から調査が得意な者に依頼を出して、ケイオス村近郊の森を調べてもらい、村の近くに魔王種がいるかどうかを確かめてから騎士に報告するという方法だ。
この方法のいいところは、魔王種がいた場合にそいつを倒すのに探索者たちが活躍する可能性も期待できるところにある。
というのも、魔物が多数いる魔境はたいていの場合、人類の生存範囲とはいえない。
それを人間が住む場所に変えるためにはどうしても魔王種を倒し、さらにその遺骸から魔物避けを作り、魔物の空白地点を生み出さないと畑すらまともに作れない。
ゆえに、大昔の偉い人はこう考えたそうだ。
魔境にいる魔王種を倒した者が、その魔王種がいた土地を得ることができる、と。
つまり魔王種を討伐した者には、貴族や騎士として新たな土地を治める資格が与えられるというわけだ。
この古くからある決まりのおかげで、日頃魔物と戦い糧を得ている探索者たちは所在がはっきり確かめられた魔王種がいる土地に多く訪れることとなる。
その探索者が魔王種を倒してくれれば、ケイオス村の村長としても大助かりというわけだ。
ちなみに、もともとこの地を所有している騎士などにとっても、探索者が魔王種を倒すのは悪い話ではない。
自分の土地の近くや隣に新しい領主が誕生するとなると問題も多く出てきそうだが、たいていの場合、探索者が領主になっても統治がうまくいかずに長続きしないのだ。
そりゃそうだろう。
それまで魔物が住み着いている魔境が、魔王種を倒しただけで実りの多い畑のある村に変わるわけではないのだから。
統治経験のない荒事専門家が人民の統治と土地開発を成功させられるケースは少ないのだ。
なので、魔王種を倒した探索者は貴族や騎士の仲間入りして領主になるという夢を選択する場合のほかに、現実路線として土地領有の権利を売却することもあるのだとか。
既存の統治者である貴族や騎士に新たに人類支配エリアとなった土地を高値で買い取ってもらい、自分は名声を得て厚遇で雇ってもらう、などのほうがその後の生活が安定するのだそうだ。
夢がある話なのか、現実はそんなに甘くないという話なのか。
ガウェイン先生の説明を聞いていて、そんなふうに思ってしまった。
ま、なんにせよ、おそらくは村長の今後の方針は多分後者の探索者への依頼となるだろうというのが、ガウェイン先生の予想だ。
それも、雪が少なくなる春からだろうということだ。
本当にそれで大丈夫なんだろうか。
そう思ったが、俺は俺でこれまで通りに生活を続けるしかない。
俺はガウェイン先生と別れて、家へと帰ったのだった。
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