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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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聴力強化

 カプリ、シャクシャク。

 手に入れた氷菓樹の実を食べる。

 皮をむいて実の中身を取り出してみると、そこにはきれいな琥珀色をした果実がある。

 それに歯を突き立てると口の中が冷たく、凍ったシャーベット状のアイスを噛んだかのような印象を受ける。

 しばらくシャクシャクとその食感を楽しんでいると、次第に口腔内の熱で解けていき、口の中全体に甘味が広がっていく。


 うまい。

 普段から甘味を食べる機会がほとんどないというのもあるだろうけれど、この氷菓樹の実は特に調理などせずとも絶品のスイーツだと言えるだろう。

 くどさのない甘さが舌の上に広がり、体温で溶けるたびに少しずつ味わいが変化していく。

 まるで高級な洋菓子を食べているようだった。

 しかもこれが体にもいいというのだから驚きだ。


「我、この命を糧とし、力を得ん」


 そして、祝詞も忘れない。

 先ほどからいくつか氷菓樹の実を食べつつ、その都度祝詞を唱えている。

 どうやら、薬草などのようにこの氷菓樹の実も祝詞を唱えて食べると俺の力になるようだ。

 氷菓樹の実が俺の体内で消化され、祝詞の力によって普段の食事よりも俺の気として取り込まれている感じがする。

 薬草よりも摂取できる気の量が多い、か?

 もしかすると、こういうところが魔物までも引き寄せることにつながっているのかもしれない。


「そんなに数が見当たらないのは、魔物が食べてるからなのかな?」


 気付けば、そんな言葉が口から漏れていた。

 祖父への土産に持ち帰るために集めているが、俺もこの高級スイーツはもっと食べたい。

 だから、なるべく多く持ち帰られるように雪の深い森の中を、目を皿のようにして探しているのだけれど時々しか見つけられない。

 氷菓樹の実を俺が見つける前に魔物が食べてしまっているのだろうか。

 なんで雪の体を持つスノーゴーレムが食べ物を狙うのかは、正直よく分からないけどな。


「もうちょっと、警戒しながら探してみるか」


 氷菓樹の実はもう少し欲しい。

 が、魔物であるスノーゴーレムには注意しなければならない。

 先ほどみたいな鳥型は羽を飛ばすという飛び道具を持っていたから危険なのは言うまでもないが、さらに危険な個体もいる。

 一度見かけたのは大きなトラのような体を持つスノーゴーレムだった。

 大きな肉食獣の肉体を持ち、猫のようにしなやかに走ってきて、木を登ろうとしてきたのだ。

 あの時は、慌てて氷菓樹の実を投げ出して逃げたことで事なきを得た。

 多分、戦ったりしたら怪我じゃすまなかっただろう。


 雪の体を持つスノーゴーレムは、その姿で強さが違う。

 小動物ほどの大きさなら十分勝てると思うが、大きいやつは相手にしたくない。

 大きいというのはそれだけで脅威だ。

 なにせ、巨大な雪の塊は質量が半端ないのだから。

 その重さのまま、素早く動かれて体当たりされるだけでも俺の体は押しつぶされるだろうし、ノクジルアックスで防ぐことも難しいだろう。

 というか、そんなことをしたら大事な斧が折れてしまう。


 なので、周囲の警戒のために内気功を活用する。

 これまでは、周囲の景色を見るのに俺は闘気を目に集中させることが多かった。

 森の中の移動の際には目に闘気を集めて色で認識することで、周囲の把握がやりやすかったのもある。

 だけど、この時季はそれはあまりうまい方法とはいえない。

 なぜなら、あたり一面が雪だらけだからだ。


 目を闘気で強化すると、水でできた雪に含まれる黒い気ばかりが視界に映ってしまう。

 それだと状況判断しづらいだろう。

 わざわざ自分から白黒写真の世界に入り込む必要なんかない。


 なので、目の代わりに耳を強化することにした。

 俺の闘気を耳を通る経絡に多く集めて聴力を強化する。

 雪には周囲の音を吸収する性質があるのか、周囲に雪が多いこの環境は非常に静かだ。

 そんな静かな環境下で音が出すものがいれば、それはスノーゴーレムのような魔物だろう。

 いち早く相手の存在をキャッチして、いざとなれば氷菓樹の実を餌に遁走することも視野に入れながら、俺は強化した聴力で周囲の索敵も行いつつ、さらに氷菓樹の実を探し回ったのだった。

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