魔石
「ふう。って、まだ終わりじゃないから気を抜かないようにしないとな」
鳥型のスノーゴーレムをノクジルアックスでの攻撃で叩き切った。
鋭いくちばしを俺に突き刺そうとするかのように突っ込んできていたスノーゴーレムを真正面から切ったため、雪の頭部などは見るも無残な状態になっている。
これが本当の生物であれば、さぞグロかろう。
だが、不幸中の幸いかこいつの体はすべて雪でできているので、気持ち悪さもなければ罪悪感もない。
この森で初めて遭遇した魔物がこいつでよかった。
そう思う。
これまでにも、内気功・迷彩を用いて気配を隠し、森にすむ小動物などを狩ったことはあった。
だが、こちらを認識して攻撃してくる魔物と戦うのはこの冬になってからのことだ。
見た目が様々なスノーゴーレムだが、そのどれもが真っ白な雪でできているためか俺も攻撃することにためらいを覚えることはなかった。
これまでにも何度か襲われたが、その都度撃退してきた。
しかし、油断は大敵だ。
なぜなら、こいつはまだ死んでいない。
いや、そもそも生きているとすらいえないのかもしれない。
雪でできた体をもつスノーゴーレムは、たとえどれほどその雪の体をバラバラにしたところで時間が経つと再起動するのだ。
なにせ、このあたりは一面が雪で覆われている銀世界だ。
自身の体を構成する材料である雪は無尽蔵にある。
その雪を使って、バラバラにされても体を作り直して動き出してしまう。
これが、スノーゴーレムの厄介なところだ。
なので、きっちりととどめを刺す。
スノーゴーレムがいかに不死身の体を持つといっても、無敵の化け物ではない。
こうして、斧で叩き切れば体をつぶせるし、そうすれば動きを止めることができる。
今も頭部をつぶされた鳥型の雪だるまが、羽を動かそうともがいているが、それだけだ。
そんな動きの悪いスノーゴーレムへと近寄り、鉈を差し込む。
俺の持つノクジルアックスは斧としては結構大きい。
こういう、鳥のような形をしたやつの胴体を割くにはもう少し小さめの刃物のほうがやりやすい。
鉈でスノーゴーレムの体をばらして、その中から魔石を取り出した。
魔石。
これこそがスノーゴーレムを魔物たらしめる証だ。
魔物とは体内に魔石を持つ存在である、と俺に教えてくれたのはガウェイン先生だったか。
人間が使う魔術ではなく、本物の魔法を使える魔物もいるようだが、別に魔法が使えることが魔物であるという定義ではない。
体内に魔石を持つ存在が魔物であり、そのなかには魔法を使えず、ただ単純にものすごい強い動物のような魔物もいるらしい。
このスノーゴーレムはそんな魔物の定義にきちんと含まれた存在で、今までに倒した個体すべてに魔石を持っていた。
そして、雪の体を解体し、その中から魔石を取り出せばスノーゴーレムが再起動することはなくなる。
最初は俺が取り出した魔石を持ち歩いていたら、周囲の雪を取り込んで復活するんじゃないかと心配もしたけれど、どうやらそういうこともないみたいだ。
これにて、魔物退治の完了である。
「氷菓樹の実がおいしいからかな? 何度もこいつらに絡まれるのは面倒だけど、その分戦闘経験になるからまあよしとしようか。我、この経験を糧とし、力を得ん」
祖父のために氷菓樹の実を持ち帰りたい俺に対して、雪の体を持つくせにおいしいスイーツを狙う魔物。
きっと今後もこいつらとは遭遇することがあるだろう。
間違っても怪我をして帰り、「もう森に行ったらだめだ」と言われないようにしないといけない。
そのためにも、きっちりと勝って帰るために、今の戦闘経験をフィードバックさせるため、俺は崩れ行く鳥型の雪だるまを見ながら祝詞を唱えたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




