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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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内気功

 ……これ、魔力じゃないのかもしれない。

 お腹の中に溜まっていた“魔力らしきもの”を消費しようと試行錯誤した結果――

 俺は、自分が感じていた謎のエネルギーが、当初の予想とは違うのではないかと思い始めていた。

 理由は単純だ。

 魔法を使っていないのに消費されていくからである。


 母親からお乳をもらう際に祝詞を唱えてから吸い込むと、確かになにかを感じ取るのだ。

 吸収したお乳がお腹に収まり、その後全身へと行き渡る何かがある。

 それは間違いないと思う。

 祝詞を唱えて起きるこの現象は、前世の記憶にはなかったものだ。

 この世界に魔物や魔法があるのなら、これは魔力に違いないと思った。

 そう考えてしまうのも無理はない。


 だけど、やっぱりこれは違うんじゃないだろうか。

 何らかのエネルギーが全身へと行き渡る感覚は今もあるし、それが全身で飽和状態になるからか、お腹の中で沈殿するように感じることもある。

 だが、それは体を動かすことで消費できるとわかった。


 最初は魔法を使えないかと考えて思いつく限りの呪文を唱えてもなにもなかった。

 だから次は無詠唱魔法を試そうと、頭の中で発動のイメージを描いた。

 すると、お腹に溜まっていたなにかは減った。

 けれど、その後の検証の結果、どうやら頭でイメージしなくても体を動かせば減るらしい。


 というわけで、俺は今、部屋の中をハイハイしている。

 短い手足を懸命に動かしながら、四つん這いで進んでいる。

 実は、今まではまだできていなかった。

 それが急にできるようになったのだ。

 今まで何度挑んでも前に進めなかった。

 それが――今日は、床を蹴った瞬間に体が前へ滑った。

 そして体を動かせば、その“なにか”は確実に減っていく。

 やがて使い切ると――俺は、ぱたりとハイハイできなくなる。


 ぱたりと動けなくなった。

 けれど、それは失敗じゃない。

 俺は今、確実に自分の力を使い切ったのだ。


 おそらくだが、余剰エネルギーとして貯めていたものを使い切り、後は全身に散らばっていた飽和状態のエネルギーも使ってしまったことで、ガス欠になり動けなくなったということなんじゃないかと思う。

 つまり、俺が感じていたのは魔力というより、純粋なエネルギーなのかもしれない。


 とはいえ、エネルギーと呼ぶのは少々分かりにくい。

 あんまりカッコよくない気もする。

 だから俺は、このエネルギーを魔力ではなく“気”と呼ぶことにした。

 体内に気を貯めることで、一時的に本来はできない身体能力を発揮させる、あるいはブーストさせることができると考えたわけだ。


 本当だろうか?

 この仮説が正しいのかどうか、俺には分からない。

 少なくとも家族間の会話でそれっぽい話が出てきてはいないように思う。

 が、俺が起きている時間なんて短いものだし、幼児の前でそんな話をわざわざするかどうかも微妙だ。

 話題に出ないからといって、この世界に“気”が存在しないとは限らない。


 もっとも、呼び方は今は大した問題ではない。

 俺があると思えば、それはあるんだ。

 少なくとも、確かに体内に気の存在を感じているんだし、それが溜まっているときにはいつも以上に力を発揮できるのは疑いようのない事実だ。

 魔法が使えないというのはちょっと悔しいけれど、まあ良しとしようじゃないか。

 何もないよりは気を使えるだけでも十分だ。


 ただ、単純に気と呼ぶのもあれなので、せっかくだから、もう少し格好よく呼びたい。

 体内の気を遣う闘気術――“内気功”と名づけよう。

 肉体強化の内気功だ。

 引き続き、魔法も使えないかを試してみるけれど、この内気功は赤ん坊の体を鍛えるのにもいいかもしれないし、積極的にハイハイをしていこうと思う。

 こうして、俺は手に入れた内気功で日々肉体トレーニングに勤しみながら幼児期を過ごしていくことにした。

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