木登り
「よし、じゃあ今日はライゼルには木登りをして、邪魔な枝を剪定してもらう仕事をやってもらうからな。ロープは持ったな? 準備はいいな?」
ギルドから割り振られる木こりの仕事。
それは、毎日同じ種類の木を伐る、というわけではないようだ。
特に俺のような木こりルーキーは、ギルドからいろいろな仕事を割り振られることになる。
今日の俺に任されたのは、再び枝落としの仕事だった。
だが、昨日のカミマキの枝を落とすのとは少し違う。
というのも、前回はほかの木こりが伐った木が地面に横たわった状態で枝を落としていったが、今日は伐られていない木の枝を落とすからだ。
地面から手が届く範囲であればそのままやってもいいけれど、届かない場所の枝は木に登る必要がある。
これは森の管理のために必要なことなのだという。
森に生える木をそのままにしておくと、枝が横に広がるように伸びて日光を遮ってしまうことになる。
そうすると、すでに枝を伸ばした木はいいけれど、そうではない木は陽が当たらなく生育が阻害されてしまう。
森には多種多様な木や植物が生えている。
その生育環境を整えるためにも、余分な枝は切り落とさなければならない。
そして、そんな木登りを必要とする枝落としの仕事に俺が抜擢された。
それは、昨日の俺の仕事をギルマスが見ての判断だ。
カミマキの枝をノクジルアックスでバッタバッタと切り落としていたのとプラスして、俺の持つ斧が軽いのも評価ポイントだったらしい。
木に登りながら枝を落とす作業では、重い刃物を持ち運ぶだけでも大変らしい。
その点、子どもの俺は体重も軽く、斧も軽い。
木登りしやすいだろうということから、高い枝も切りやすいと判断されたわけだ。
その仕事は当然受けた。
そして、木登りするために俺がギルマスから渡されたのはロープだ。
しっかりと編まれた太めのロープを持って、木登りを開始する。
このロープはある程度木に登った時に使うことになる。
ギルマスに枝を切るように言われた木はいくつもの枝が広がるように伸びているので、登るときに足の踏み場がないというわけではない。
が、それでも枝を落とすときには斧を持って振る必要がある。
それはつまり、木登り中に木から手を放すわけだ。
その際には落ちてしまう危険性が当然ある。
そんな木登り中の手放しシーンでの安全確保の道具がロープなわけだ。
体にくくったロープを木の幹などにグルッと回してロープの反対側を再び体に固定する。
腰回りにロープをくくることで、かなりの安定感の向上が見込まれる。
その状態で、闘気を操り、斧を振る。
昨日、経絡を強化したが、その日家に帰ってからもさらに数本の経絡を空洞の管のようにして気の流れを速めている。
そのおかげか、手を放してすぐに内気功を終え、外気功を行い斧を強化した。
そして、振る。
しっかりと木の枝に流れる気も見極めて、切り落としやすい場所を狙い、スパッと切ることができた。
「ふう。ロープを固定するのがちょっと手間だな。金属の固定具でもノクジルさんに作ってもらうか?」
木登りでの枝落とし作業は順調に進んでいる。
だが、何本か枝を切り落としているうちに気付いたことがあった。
それは、安全確保のためのロープを固定するのがいちいちめんどくさいな、ということだった。
わずかな手間だが、ロープを木の幹に回して体に固定するのが面倒なのだ。
木を登ったり、斧を振るよりも、ロープを扱うほうが時間がかかってしまっている気もする。
もっと、簡単に固定できないだろうか。
それこそ、前世であったようなD字型の金具なんかはどうだろう。
カラビナとか言ったっけか。
カチッと嵌めるだけで簡単に着脱できるうえに、固定力はしっかりとしていたはずだ。
一度、紙に図を描いてノクジル爺さんに見せてみてもいいかもしれない。
作ってもらえないか相談してみよう。
そんなことを考えながら、木登りを続けて、枝を落としていったのだった。
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