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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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流れ

 ガン。

 振り下ろしたノクジルアックスがカミマキに当たり、鈍い音を響かせる。

 枝を落としたり、薪を割るときのようなスコンという気持ち良い音ではなく、抵抗感のある音だ。

 斧は木の表面に刺さった状態で止まってしまっている。


 この結果が悪いわけではないと思う。

 誰も一撃で木を切って丸太にしろとは言っていないからだ。

 同じ場所を何度も狙い、切れ込みを深くしていけばいい。

 それは分かっている。


 が、ほかの木こりたちよりも斧での一撃の切れ込みの深さが浅いのが気に食わない。

 これではよーいドンで木を伐り始めても俺のほうが圧倒的に伐るまでの時間がかかることだろう。

 もっと深く食い込ませられるようにならなければならない。

 理想は高く、最終的には斧を一振りでこのくらいの太さの木は伐りたいものだ。

 そう考えて、何度も斧を振っていく。


「我、この経験を糧とし、力を得ん。また、汝、闘気を糧とし、力を得ん」


 祝詞を唱えて、斧を振る。

 これまでにも繰り返してきたように、自分の肉体の力を向上させるためにも内気功・輪転を行い、斧の威力と耐久性を向上させるために外気功・外纏を行って、振り下ろすフォームにも意識を配る。


 ……やることが多い。

 一つひとつを丁寧にやる必要があるのだろうけれど、もっと効率よくできないものだろうか。

 そう考えながら、斧を振り続け、自分の動きを一つずつ見直していく。


 内気功の改良はできないものだろうか。

 ふと、そんなことを思った。

 俺が今行っている気の扱いは内と外の二種類あり、そのうちの体内での気の使用を内気功と呼んでいる。

 その中でも、体内で発生した気を全身に巡らせる内気功・輪転は幼いころから使っているものだ。

 身体機能を高めてくれるし、多分、俺の肉体の成長も助けてくれている。


 この輪転が悪いわけではない。

 むしろ、この輪転は今後も使い続けて、さらに熟練していくほうがいいだろうとすら思っている。

 よどみなく、スムーズに体内を気が流れるようにして、状況に応じて手や足、あるいは目や耳へ気を偏在させる技術は、絶対に必要な技術だと思う。



 だが、しかし、だ。

 もっと、効率よく体内の気を移動させることはできないものかとも思う。

 特に、今回のように外気功も使って、斧などを強化するときに、いちいち体内の気のコントロールにまで意識を向けているのでは時間がかかってしまう気がしたからだ。


 最終的には意識せずとも体内の気を自在に操れれば理想だ。

 けれど、そうではなく、今からでもできる方法で体内の気をスムーズに動かす方法はないか。

 それを考えたときに、ふと昔ガウェイン先生に聞いた話を思い出した。


 あれはたしか、魔術についてのことだったように思う。

 魔術を使うには魔物を倒し、祝詞を唱えて魔術刻印を鍛えなければいけないという話だ。

 魔術刻印というものはなにかをはっきりと理解していないが、入れ墨などのように体表に見える印ではなく、体内に描き込まれる何かしらの刻印であり、あるいは回路のようなものである、とかなんとか話していた。


 回路。

 それがふと、頭の中に思い浮かんだ。

 俺の体内を巡る気も、自分の中を無秩序に流れているわけではない。

 これはあくまで俺の感覚によるものだが、おそらくは気の流れとして経絡と呼べるようなものがあるのだと思う。

 これは言ってみれば、川の流れのようなものだろうか。

 あるいは、気が一時的に留まり、体外へと放出されるツボなどもあることから、この経絡は電車の線路と思ってもいいかもしれない。


 回路、あるいは線路。

 そう思った時、俺は自身の中を流れる気をさらに効率よく輸送できるのではないかと思った。

 そうだ。

 今まではただ流れを感じるだけだった。

 だが、自分でもっと流れやすい道を作ってやったらどうだろうか。

 大きく作り変えるつもりはない。

 すでに感じている体内の流れを劇的に変えてしまうようなことができるのかわからないし、やってしまって不具合があっても困る。

 だが、よりよくするための改良、手直し、補修といったことなら可能ではないだろうか。


 そんなことを考えた俺は、斧を振り上げた状態で自分の肉体に流れる気の通り道である経絡に意識を集中させたのだった。

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