ずっと一緒
「ライゼル、お前なにしてんだ? いくら新しい斧を作ったからって、その斧と一緒に寝床に入るのはおかしいだろ」
ノクジルアックスでの薪割りを行い、その日は森に行くことなく終了した。
家族で晩御飯を食べ、兄弟げんかもして、なんやかんやしながら寝る時間となった。
そして、そんな俺の姿を見て、次兄が呆れたように言った。
俺の行動はおかしい、と。
まあ、たしかにそうだろう。
俺はその日、一日中斧を肌身離さず持ち歩いていた。
薪割りを終えた後に自宅に入るときも斧を持っていたし、夕食の支度を手伝ったり、食事をするときにすら斧を手にしていた。
何度も両親などから片づけておきなさいと言われたが、それでもやめずに持っている。
そして、しまいには夜に寝る際にも斧を離そうとしていない。
まるで大切な恋人と夜を過ごすかのようなルンルンとしたスキップで寝床へと向かう俺の姿はさぞおかしく見えたことだろう。
兄の目は奇妙な生き物を目の当たりにしたような、そんな複雑な表情を弟である俺に向けていた。
だが、これには俺にも言い分がある。
それは、このノクジルアックスが普通の斧ではないという点だ。
普通に薪割りをしようとしただけで斧にダメージが残るくらいには弱い隕鉄製の斧。
こいつを木こりとして大木を伐り倒せるくらいには成長させてやらないといけない。
そして、その成長には俺の気を送り込む外気功・外纏を行うことが必須だ。
そのために、俺は食事の時も就寝の時にもノクジルアックスを手放さず、常に気を送り続けていこうと考えている。
俺の闘気を糧に成長するのなら、外纏を維持する時間が長いほど成長も早まるはずだ。
そして、今の俺はまだまだ子どもだ。
八歳児の末っ子である俺は、これまでほとんどのものを兄たちからのおさがり品を使用していた。
つまり、自分だけの物というのは何一つ持っていない。
そんな俺が自分だけの斧を手に入れて喜んでいるのだろう、と両親は複雑ながらも多少理解を示してくれている。
多分、もう少し大人になったら斧を持ち歩く男性というのは危険人物であると認識されてしまうだろう。
今はまだ、「子どものすることだから」「どうせすぐ飽きるさ」と、家族も見守りモードでいてくれている。
斧を常に持ち歩いて生活するのは今しかない。
だから、誰から奇異の視線を向けられようとも、正気を疑われようとも、俺はノクジルアックスと一緒に生活することを心に誓った。
早く大きくなれよ、と寝床の中で斧を磨きながら笑みを浮かべる俺を見て、兄や姉たちはドン引きすることとなったのだった。
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