やりすぎ厳禁
全身へ巡らず、腹の奥に沈殿するように溜まった魔力らしきもの。
これが果たして益となるのか害となるのか。
なんとも判断しづらい。
どうすべきかと頭を悩ませ、あれこれ試してみたが、結局どうにもならずに再び食事の時間となった。
腹に魔力が溜まっていても、空腹は別問題らしい。
空腹を感じた俺の幼児としての肉体は、新たな栄養分を求めて声をあげた。
俺の泣き声を聞き、母親がやってきてお乳をくれる。
気付けば俺は、いつものように「我、この命を糧とし、力を得ん」とバブバブ唱えながら反射的に吸いついていた。
わずかな期間にもかかわらず、俺は祝詞を告げてから食事をするのが癖になってしまっていたようだ。
そして、その時に感じたのは、さらに魔力が溜まってしまったということだった。
というか――
これまでは全身へ送られていた魔力が、うまく流れず腹に残っている。
そんな感覚だ。
要するに、俺の全身にはすでに魔力が行き渡っているために、飽和状態になっているのかもしれない。
このまま溜まり続けたら、ある日暴走するんじゃないか?
もし暴走しても、俺は泣くことしかできない。
そう考えると、今の状態はあんまりいいものではないのかもしれない。
この世界の仕組みがどうなっているのかはわからないが、前世の知識をもとにして考えるのであれば、過ぎたるは猶及ばざるが如しというではないか。
やりすぎるくらいなら、むしろ足りないほうがいい。
体にいいと言われる食材でも、大量に食べ続ければ、逆に不健康な状態になってしまうことだってあったはずだ。
例えば、筋トレ後のプロテインだ。
何ごとも適度なほうがいいのではないか。
……そうか。
筋トレだ。
筋肉を鍛えるためには、その筋肉に刺激を与え、そしてその筋肉をさらに大きくするためにプロテインを飲む。
だけど、人はつい楽をしようとして、この順番を間違える。
「プロテインを飲めば筋肉が付く」と錯覚してしまうことがある。
もしかすると、魔力もこれと同じなのではないだろうか。
つまり、食事で魔力を得るのは重要だが、それだけではいけないのかもしれない。
魔力を使ってやらないといけないんじゃないだろうか。
消費と摂取をバランスよく行うことで、健康的に魔力を鍛えられる可能性があるんじゃないか。
……で、俺はどうすればいい?
なんとなく、魔力らしきものを感じ取れるようにはなっているが、いまだに魔力をどうすれば消費できるのかがわからない。
お腹に溜まってしまった魔力を動かせたりしないだろうか。
……やりすぎは厳禁だ。
だが、何もしないのも違う。
俺は、腹の奥の魔力にそっと意識を伸ばした。
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