隕鉄
「ライ坊の斧に使う素材を普通の鉄ではなく違う鉱石にしてみるのがいいかもしれんのう」
俺の斧を作るため、ノクジル爺さんはそう言うと鍛冶場の奥にある素材置き場へと向かった。
そして、そこでなにやらゴソゴソと探して、一塊の岩を手にして戻ってくる。
これは……なんだろう?
普通の鉄じゃないみたいだが。
「これは隕鉄じゃ。ライ坊の斧はこれを使って作ってみるとしようか」
「隕鉄? なにそれ。隕石から採れた鉄とかってこと?」
「そうじゃ。ライ坊の頑張りが天に認められてのものじゃとすれば、空からの贈り物である隕鉄はまさにうってつけじゃろう。それにこいつには不思議な性質があってのう」
「へえ。どんな性質が隕鉄にはあるの?」
「この隕鉄は弱くて軽いんじゃよ。普通に斧にしただけでは、刃こぼれもしやすいじゃろうし、切れ味も鈍く、全体的な耐久性も低くなる。じゃが、隕鉄で作った道具は長い期間大切に使うと成長すると言われておる。特に、太古の昔からある魔剣などはこの隕鉄で作られた剣が魔石をたくさん砕いたことによって成長したものじゃとも言われておるんじゃよ」
ほほう。
どうやら、この不思議鉱石で作った斧は初期状態では低スペックになるが、斧が成長すればその性能も上がる、ということなんだろう。
俺が使っていた鉈がノクジル爺さんから見ても成長していると判断するくらいであれば、この隕鉄で作られた斧も成長する可能性がある、というわけか。
しかも、不思議なことに成長すれば重さも増すことがあるのだとか。
つまり、最初は性能こそ控えめだが軽くて扱いやすく、子どもの俺でも振れる斧になる。
そして成長すれば、大人になった俺でも扱える重く強力な斧になるというわけか。
「ありがと、ノクジルさん。でも、いいの? そんなすごい鉱石を俺の斧に使っちゃって大丈夫なの? っていうか、高いんじゃないのかな?」
「いいんじゃよ。さっきも言ったが、こいつで作った斧は普通ならば木を伐るには弱すぎる斧にしかならんのじゃ。だから、この村で木こり相手に作る予定もないし、ましてや鍋や包丁などという日用品にも当然使えん。じゃから、この隕鉄はもう長いことわしが保管したまま使う機会がなかったものなんじゃよ。むしろ、ライ坊のような者のために使われてこそ、こいつもうれしかろうて」
「そっか。じゃあ、お願いするよ、ノクジルさん。その隕鉄で俺専用の斧を作ってください。俺、絶対にその斧を大事に使うし、大人になっても使えるように成長させてみせるよ」
「あい、わかった。わしに任せい。いずれ成長することはもちろんじゃが、鍛冶師としてのプライドにかけても、最初からきちんとライ坊にとって使いやすい斧を作って見せるからの。大船に乗った気でおるのじゃ」
ノクジル爺さんの職人魂に火が付いたようだった。
一見すると普通の鉄にも見えそうだが、光の当たり方によっては怪しく光る隕鉄鉱石。
それを手に、鍛冶場へと向かう。
そして、その後ろから俺にもついてこいというので、ノクジル爺さんと一緒に俺もそこへと向かった。
すぐに製作に取り掛かるのかと思ったが、どうやら違うらしい。
まずは、俺の身体測定から始めるノクジル爺さん。
身長や体重、手足の長さ、胴回り、骨格まで確認する。
まるでオーダーメイドの服でも作るかのような念入りな採寸だった。
そして、ひとしきり計測を終えると、今度は俺に体を動かさせ、その動きを確認していく。
俺の鉈を振る動きや、鍛冶場においてある鉄の棒などもいろいろと交換しながら、振り回して体の癖なんかも見ているようだ。
最後には占い師のように手のひらを見て、にやりと笑いながら、俺と硬い握手をした。
どうやら、それが最後のチェックだったようだ。
その後、俺は鍛冶場から離れるように言われた。
そしてノクジル爺さんは轟々と炉に火を熾し、隕鉄を鍛え始めたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




