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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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ノコギリ

 竹を伐るときのポイントとして、地面から一メートルほどの高さで伐っておくようにとも言われたので、だいたいこのあたりかなと思うところにノコギリの刃を当てる。

 まずはこのノコギリで竹を真横に切り落とすつもりだ。

 刃の当てる角度を調整し、ギコギコと前後に動かす。


 意外と簡単には切れないものだな。

 ノコギリを動かしながら、そんなことを考える。

 このノコギリは我が家の物置にあった古い物を俺が研ぎなおしてきれいにしたものだ。

 もう何年も研ぎはやってきているし、しっかりとノコギリの刃を一つひとつ研いでいる。

 これは意外と大変な作業だ。


 というか、この研ぎ仕事は村の鍛冶屋に依頼すると結構値段が取られると聞いている。

 これは別に鍛冶屋が暴利をむさぼっているというわけではなく、それだけ手間がかかるうえに知識と技術がいるかららしい。


 そういえば、前世でも聞いたことがあったなと頭の中に記憶がよみがえる。

 あれは確か、動画サイトに投稿された動画の一つで大工さんが大工道具について語っていた内容だったはずだ。

 昭和から平成、そして令和へと時代が移行していく中で、大工道具で一番大きく変わったことといえば電動工具が登場したことだ。

 電動工具が主流になったことで大工の仕事の手間は格段に減った。

 だが、その電動工具を除いたうえで一番大きな変化がなんだったかと聞かれた際に、その大工さんはノコギリの替え刃が出たことだと言っていた。


 昔のノコギリは高級品の一品物だったそうだ。

 高価な道具であり、大切に扱って仕事をするが、しかし使えば必ず摩耗していく。

 特に刃が傷んでくると狙ったところをまっすぐに切ることができなくなる。

 その場合どうするのかというと、専門店に出して研いでもらうのだ。

 だが、これが非常に高かった。

 長年大工の仕事をしていると、ノコギリのメンテ代は相当な金額になったのだという。


 しかし、そんな高級品のノコギリにも替え刃が登場した。

 それまでは手入れに出していたものが、まるでカッターの刃を交換するような気軽さで使えるようになったのだそうだ。

 傷んでくれば手入れに出すのではなく、新しい刃に交換して使う。

 いつしかこれが当たり前になったのだ。


 が、今の俺の住む村の木こりではそうはいかない。

 電動工具などはもってのほかだが、ノコギリの替え刃なんてものもない。

 刃が傷んだら専門職に高いお金を払う必要があるんだ。

 なのだが、俺の研ぎは本職の木こりの親ですら文句を言わず、なんなら俺に研いでくれるようにと頼むくらいだ。

 実はこの一年で俺の一番の稼ぎは薪拾いでもなければ森の恵みの採取でもない。

 ギルドのメンバーから研ぎを頼まれることも多い。

 これがかなりの稼ぎになっていた。


 そんな俺の研いだノコギリで、竹を真横に寸断するべく伐っていく。

 ギコギコギコ。

 しばらく一心不乱に腕を動かし、そしてついにその時が来た。

 竹が自重に耐えられなくなり、完全に切断する前に横へと倒れていく。

 ミシミシという音がした時点でノコギリを引き抜き、後方へと離れてその竹が倒れるところを見守る。


 見事に倒れた竹を見て、思わず達成感がこみ上げた。

 どうやら、俺の木こりとしての仕事はそう悪い結果にはならなさそうだ。

 うまく第一歩を踏み出せたことに満足しながら、次に伐るべき竹へと目を向けた。

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