ケイオス竹
「俺たちの村の竹はケイオス竹って呼ばれていてな。節が少なくて真っすぐなものが多いから、竹細工として加工しやすくて評判なんだ」
「へえ、そうなんですね」
「だが、竹は厄介者でもある。春には食料にもなるタケノコが採れたり、竹炭として使えたり、竹細工として商品にもなるが、なんせ周囲一帯に広がる性質があるんだ。一本の竹が見えたら、その下の地面の中を横に広がって根が伸びてあっちこっちから次々生えてくるからな。放っておいたら、家の下から竹が生えてきて、家が傾くなんてこともあるんだから困ったもんだ」
木こりとしての仕事の第一弾として竹を切る仕事が割り振られた。
その竹は竹林として村の中にある。
その場所をギルマスに案内されながら、俺は竹についての基本的なことをあれこれ聞かされていた。
ようするに、今回の俺の仕事は竹林の管理ということになるらしい。
よそでも評判のケイオス竹は真っすぐに伸びる性質があるものの、竹が好き勝手に生い茂ると、笹や植物の蔦が絡まり合って日当たりが悪くいびつになり、真っすぐに伸びないこともあるようだ。
そのため、なるべく竹細工などをしやすいように真っすぐの竹を作ることを目的に間引く必要があるとのこと。
また、竹林が広がりすぎて村の建物などに影響を与えそうな場合は、その周辺の竹をまとめて伐採し、ギルド特製の農薬を撒いて竹を枯らすこともあるのだそうだ。
「今回はライゼルの初仕事だからな。わからないことも多いだろう。というわけで、こんなものを用意した」
「それは布? じゃなくて、リボンかな?」
「そうだ。俺が今から竹林に入って竹のこのリボンを巻いていく。いいか、ライゼル。このリボンを巻いた竹は切らずに残しておいてくれ。反対に巻いていないやつはどんどん切ってくれてかまわない」
「おっけー。それが目印ってことだね」
「そうだ。伐った竹は可能なら竹林から引っ張り出して並べておいてくれたら助かる。まあ、そのまま地面に倒したままでも構わんがな。後で、枝を落としてそれも加工場に持っていくが、そのへんのことについては、ま、後からだな。とりあえず、お前は伐れるだけ伐ってくれりゃそれでいい」
そんなことを言いながらも移動を続け、竹林へと到着したらギルマスは早速目印として竹にリボンをつけていく。
どうやら、ある程度真っすぐな竹を等間隔に残していくようにするみたいだ。
思ったよりも竹林の範囲が広い。
というか、見渡す限り竹林が続いている。
リボンをつけなかった竹を全部伐ってしまうとこの竹林はかなり寂しい光景になってしまうんじゃないかと思ってしまう。
が、どうやらそれでもいいらしい。
ケイオス竹の成長力はすごいようで、放っておいてもすぐ生えてくるから伐りすぎぐらいがちょうどいいのだとか。
そして、当然この作業は仕事であるからお金が発生する。
「竹を伐れば伐った分だけ稼げるってことだよね」
「おうよ。ま、無理せず頑張ってくれや。お前は親父のレギンから鉈やノコギリを借りてきているから、道具はあるようだが、一応この皮の帽子はかぶっといてくれ。安全第一に気をつけてな。じゃ、俺は別の現場があるから一度離れるぞ。昼頃に様子を見に来るからな」
そう言ってギルマスがヘルメット替わりに皮の帽子を手渡してくる。
使い古しで汚れやほつれがあるけれど、なかなかにぶ厚く、しっかりした帽子だ。
なんの皮なんだろうか?
頭にかぶって軽く叩いてみても、衝撃がほとんど伝わってこない。
もしかして魔物の皮でも使った帽子なのかもな。
離れていくギルマスにお礼を言って手を振り、姿が見えなくなったころに俺は気合を入れて竹へと向かって行くことにした。
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