次のステップ
「お、ライゼル。ちょうどいいな。話があるんだ、ちょっとこっちに来てくれ」
「りょーかいです、ギルマス」
俺が森に入って薪や柴を拾ったり、薬草やキノコなどの採取を始めてから一年が経過した。
俺はもう八歳になった。
まだ子どもではあるが、森を歩くことにはすっかり慣れている。
そんな俺が、材木ギルドにこの日採取したものを提出しているときに、ギルドマスターのロンドさんが声をかけてきた。
普段からちょくちょく話しかけてくれるが、わざわざ応接室へ呼ばれるのは、ギルドに加入したとき以来じゃないだろうか。
「俺、なにかやっちゃいましたか?」
「いや、お前はよくやっている。問題はないさ。よくこの一年、文句ひとつ言わずに仕事に励んでくれたな。お前が持ち帰ってくる採取品はどれも質がいいって買い取りに来る商人たちにも評判になっているぞ。まあ、薬草とかをもうちょっと卸してほしいとも言われているんだがな」
「薬草は自分で煎じて飲んでますから。まあ、そういうことならもうちょっと買い取りに出してもいいですけど」
「お、そうか。助かるぜ。って、そうじゃねえ。今回、俺が言いたかったのは、違う話だ。そろそろ、ライゼルも次のステップに移行してもいいころ合いじゃねえかと思ってな」
この一年、俺はほとんど毎日のように森に入っていた。
そして、薪や柴を拾い続け、採取を繰り返していた。
その際には、欠かさず祝詞も唱えていた。
その効果が出てきたのか、俺の技量はかなり向上してきたように思う。
とくに、森の中を移動する速度だとか、採取品を見つける速さや、採取にかける時間や丁寧さ、そう言った数々の技量が伸びてきているのを実感している。
どれも単体なら大した技量ではないかもしれないが、それらすべてが向上したことによって、俺はほかの木こりたちが採取しようとしてもその倍以上も早く質のいいものを採れるようになってきていた。
その成果もあってか、材木ギルドに買い取りに来る商人たちも、最近は木材だけではなく森での採取品なんかにも興味を示しているようだ。
まあ、町から来る商人たちからしても材木だけではない商品が得られるというのはお得なのだろう。
だからこそ、俺が自家消費している薬草ももう少し売ってほしいという要望が出ているらしい。
ただ、今回の話の本題はそれではなかったようだ。
「次のステップって言うと、ようやく木こりとしての仕事をさせてもらえるってこと?」
「ああ。待たせたな。ようやくライゼルにも木を伐ってもらおうかと思っている」
「ほんとーだよ、ギルマス。ていうか、材木ギルドに入ったのにいつまでも木こりとしての仕事ができないってのはどうなのって気もしてたんだからね」
「まあ、そう言わんでくれ。俺たちだって気を使っていたんだぞ? お前みたいなガキを森に連れていくだけでも村の中では文句を言うやつがいないわけじゃないんだ。ライゼルを連れていくなら俺も連れてけ、っていうガキどもの声が何度もあったんだからな。でも、森は危険があるんだ。お前ひとりならともかく、好き勝手に動くガキどもの面倒を見ながら、木を伐るなんてできないだろう?」
「ああー、まあそうだよね」
確かに、ギルマスの言うことはもっともだろうな。
なるほど。
そういう意味もあって、今まで俺は森に入っても木こりとしての正式な仕事はさせてもらえなかったのか。
それに、親父がギルドに加入する前に学校に通わせたのにも、こういう意味もあったのだろう。
今よりさらに年齢が低いときにギルドに入って森に行くようになっていたら、それこそもっとたくさんのご意見が材木ギルドにやってきたはずだ。
だからこそ、周囲を納得させるために学校に通い、そこで一定の成績を出させたということか。
「でも、そういうことなら、ようやく俺も木を伐る仕事をさせてもらえるってことで、いいんだよね?」
「ああ。だが、条件がある」
「条件?」
「お前にはこれから木こりとして木を伐ってもらう予定だ。だが、木を伐るのは森の中じゃねえ。村にある竹林だ。ライゼルにはこれからは竹の伐採を頼もうと思う」
竹、か。
なるほど、考えたな。
確かに、村の中にある竹林だったら俺が木を伐っていても魔物や野生動物に襲われる心配もなく、安心して作業できる。
それに、竹は太過ぎないのもいいのかもしれない。
もしもでっかい木を伐れと仕事を割り振って子どもに怪我をさせたら、それはそれで問題視されるのかもしれない。
竹なら、伐った時に倒れてきても、多分木に押しつぶされるようなことにはなりにくいんじゃないだろうか。
もちろん、安全第一でやるのは当たり前だけど。
なんにせよ、ようやく俺にも木こりとしての仕事が回ってきたわけだ。
俺は早速次の日からその竹林へと竹切りに行くことになったのだった。
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