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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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言葉

「あぶー」


 一人きり、ベッドに寝かされたまま声を漏らす。

 当面の目標は決まっている。

 幼児ながらに意識がある今のうちに、現状把握と訓練だ。

 まず目を付けたのは――魔力だ。

 あるかもしれないそれを探すため、意識を自分の内側へ向ける。

 前世には存在しなかった魔力。

 それが俺の中にあるのかどうかさえ、さっぱりわからない。


 おへその下――いわゆる丹田にあるのではないか。

 あるいは、胸の奥にある心臓?

 それとも魔力は頭にある脳の中に眠っているのか?

 そんなふうにいろいろと考えて、自分の意識を各部位へと向けたのだが、何らかの力を持ったエネルギーらしきものは見当たらない。


 つーか、本当に魔力なんてものはあるんだろうか?

 だんだんと、そんな根本的なことが心配になってきた。

 家族の会話から拾った単語の中に、魔物だとか魔法だとかいうものがあると思ったのだけれど、それも間違いだったのではないかと不安になってきてしまったのだ。


 この世界で俺の家族が話している言語は日本語とは違う。

 もちろん聞き覚えのある言語ではないが、少なくとも日本語よりは西洋系の言葉に近い響きだった。

 あまり言語について詳しいわけではないが、おぼろげながら分かる文法からは英語に近い言葉のような印象を受けた。


 ま、ようするに俺の知らない言葉を親たちは話しているわけだ。

 当然、文法から単語まで何一つわからない。

 だから最初のうちは、聞き取れた単語を拾い集め、それをつなげながら文の意味を推測していた。

 そのなかで魔物だとか、魔法という言葉に違いないと思う単語が登場しただけであり、それが果たして正しいのかどうかは現状なんとも分からない。


 なので、魔力が本当に存在するのかも確信を持てないまま、探す日々が続いた。

 そして俺は、次第にそんなものは存在しないのではないかと思うようになっていた。

 ――魔力なんて、存在しないんじゃないかと。

 が、そこに転機が訪れた。

 転機は、いつもと少し違う一日から始まった。


 それまでの俺は、一日中ベッドに寝かされて、お腹が空いたら泣き声をあげるだけの存在になっていた。

 どうも、このあたりの風習では子どもが泣いたからといって、誰かがすぐに飛んできて泣く子をあやす習慣はないみたいだ。

 たいていの場合はほっとかれてしまう。

 もちろん、育児放棄というわけではなく、時々顔を見に来て腹が空いていることを確認したら母親がお乳を飲ませてくれるのだが。

 つまり、これまでは家族の食事の場に俺が同席していたわけではなく、母親だけが部屋に戻ってきて俺にお乳という食事を与えてくれていたのだ。


 けれど、この日は違った。

 俺は母親の胸からたくさんの栄養を取ったあと、いつもならばすぐにくる眠気が来なかったことでパッチリお目目を開けたままだった。

 そのせいだろうか。

 母親は俺が満腹になっても寝る気配がなかったからか、そのまま抱っこして部屋を出ていったのだ。

 そして、連れてきたのは皆で食事をするための部屋だった。


 うちは、日本の少人数核家族とは違い、家族の人数が多い。

 俺には両親や祖父母のほかにも、何人もの兄弟がいる。

 そんなたくさんの人間がいる部屋で、料理が並べられた食卓の周りに置かれた一席に俺を抱えた母親が座る。

 母親が食事の場へとやってきたことを確認し、おそらくは上座に座っているのであろう、俺の父親が言葉を発した。

 これから行う食事の前に一言、感謝の言葉をささげたのだ。


「ライゼルも連れてきたのか。まあ、いい。全員そろったことだし、いただこうか。『我、この命を糧とし、力を得ん』」


 んん?

 今、俺の親父はなんて言ったんだ?

 いただきます、的なことを言ったのだと思うが、なぜかその言葉が他とは違うものに感じられた。

 父親の言葉をなぞるように、皆が同じように言葉を発し、それから並べられた食事に手を付けていく。


 今の、日本語っぽかったよな?

 ほかの言葉と違い、はっきりとその言葉の意味が理解できた。

 我、この命を糧とし、力を得ん。

 もしかして、これを言いながら食事をすれば力が得られるのだろうか?

 俺はこの言葉のことが無性に気になってしまって仕方なかったのだった。



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