ギルド
ギルドというのは組合である。
この村にある材木ギルドはこの村にいる木こりたちが組合員として加入しており、そこで得た木材を商人を通して売るための取引をしている。
これはたぶん、村の商取引をまとめる互助組織のようなものなのだろう。
木こりが個人的に商人と取引をして木材を売っても安く買いたたかれることが多いが、木こりたちが集まり、組織的に取引をすることでそれを防ぐ意味合いが強い。
俺が所属することとなったのはケイオス材木ギルドだ。
俺の生まれ故郷の村であるケイオス村にある材木ギルドということで、村のすぐそばに広がる広大な森で木を伐る者たちはすべて加入している。
親や兄たちも当然そうであり、だからこそそんな組合員の紹介があるから俺のような子どもが入ることができたというわけだ。
「お前がレギンの子のライゼルか。話には聞いているぞ。今よりももっと小さいころからレギンの奴に薪割りをさせられていたみたいだな」
ケイオス材木ギルドは村の端のほうにあり、森からも近い位置に事務所となる建物と材木置き場がある。
その事務所にて親父と一緒に入ると、応接室のようなところに通されて組合の長であるギルドマスターと話をすることになった。
扉の奥から現れたのは、ひげもじゃの大男だった。
ひげもじゃで、腕も足も胴体もぶ厚い、まさに木こりそのものという感じの人物だ。
がっはっは、と大きな声で笑いながら親しげに話しかけてくる。
俺のことは親父からも話をこれまでに聞いていたのか、知っているようだ。
「薪や柴を持ってくればお金が得られるんですよね?」
「ん? ああ、そうだな。ギルドに入った最初はそういうことをしてもらうことになるだろうな。ただ、森に慣れてきた頃合いを見て木を伐る作業も経験していってもらうことになるだろう。その辺はまあ、お前の家族に付き添ってもらって覚えてもいいし、うちのメンバーと一緒に仕事をして覚えるのもありだ。ま、なんにせよ、しばらくは森で迷わず、怪我せずに帰ってこられるようにならんとな」
「そうだぞ、ライゼル。森の中には野生動物もいるが、たまに魔物も出る。一人では絶対に奥には入るなよ」
「うん、わかっているよ」
木こりがギルドを作って活動しているのは、なにも売るときの値段だけが問題になるわけではない。
そもそも、一人では仕事がやりにくいからこそ組織が必要なのだ。
伐った木を移動させることなどが、その典型だ。
また、木が覆い茂る森の中は危険がある。
俺は今まで見たことがないが、魔物と呼ばれるものがいるのだそうだ。
なので、常に複数で行動することが大切だという。
森にすむ魔物。
そんな魔物はこの村にはやってこない。
いや、ゼロではないのだろうけれど、俺が生まれてからもその回数は少なく、俺はまだ見たこともない。
魔物避けの仕組みが村にはあり、それがうまく機能しているからなのだそうだ。
そんな魔物避けの働きが森の中でもあるのだけれど、しかし、村から距離が離れる都合上、ときおり魔物と出くわすこともあるのだそうだ。
魔物。
この世界に転生してから、まだ一度も見たことがない存在だ。
魔物を見てみたい気もするが、危険があるものにわざわざ自分から近づきたいかというとそうではない。
俺が魔法でも使えればもっと積極的に冒険に出かけられるのかもしれないけれど、今のところは魔法のまの字も使えない。
おとなしく先達の意見に従うことにしよう。
だがそれでも、これまで禁止されていた森への立ち入りに、ついに許可が出た。
ギルドの加入はギルドマスターのおっさんと話したことで終わった。
こうして俺は、親父の付き添いのもと、初めて森へ足を踏み入れることになった。
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