ひらめき
「うーん、これもだめかぁ」
持ち帰ることができない魔物素材を魔石に変える。
これができるようになれば、探索の際に得るものが格段に増すことになる。
ガウェイン先生の話を聞き、方法は祝詞なのではないかと考えた。
なので、一晩中マジックバッグから取り出したトレントの枝を握りながら、思いつく限りの文面を唱えてみた。
しかし、結果は芳しくない。
成功すれば、トレントの枝が小さな石のような魔石になるかもしれないと期待していたのに、そんな変化は一切起こらず、今も俺の手にしっかりとした枝が残っている。
そして、そのまま朝を迎えてしまった。
まさか、この歳で完徹することになるとは思わなかった。
だが、頭が眠りを欲せずにいるため、もう起きてしまうことにする。
そして、井戸まで移動して水を汲み、顔を洗った。
「……つーか、魔石化ってなんだよ。魔物の体を魔石に変える方法なんてほんとにあるのか? もしそうなら、魔物を倒すことなく魔石に変えることだってできるんじゃないのか? てか、商品の魔物素材を勝手に魔石に変換する馬鹿が現れるかもしれないだろ」
顔を洗い、少しすっきりとしたところで、いろんな考えが頭を駆け巡り、思わず愚痴が口をついて出た。
でも、本当にそうだ。
魔物の素材を魔石に変える手段があるとして、それが悪用されることはないのだろうか。
もしできるのであれば、商人は気が気じゃなくなるだろう。
また、例えばだが、トレントからとった材木で家を建てたとして、その家を一瞬にして魔石化することもできることにならないだろうか。
だが、果たしてそんなことが本当にできるものなのだろうか?
もしかすると、魔物の素材を魔石に変えられるのはダンジョンの中という特殊な条件があるのかもしれない。
そうならば、お手上げだ。
いくら頑張っても、魔境の森で魔物を相手にしている俺たちではその前提条件から外れてしまうことになるからだ。
それでは絶対に実現できないことになる。
「うーん。どうしたものかな。でも、諦めるにはまだ早いだろうしな」
ぶつぶつとつぶやきながらも、幼いころからやっていた水汲み作業を無意識にしてしまう。
村の共同井戸は俺の家からは離れているため、井戸から汲んだ水を家まで運び、水瓶に入れる。
家族用の大きな水瓶に汲んできた水を流し込んでいた、そのときだった。
「……そうか。別に魔石を作ることにこだわる必要はないかもしれないよな。こいつみたいに、継ぎ足せばいいんじゃないか?」
水が入った大きな水瓶に、汲んできた水を追加する。
それを見ていてひらめいた。
これと同じことができないだろうか、と。
俺はこれまで、魔石を抜き取り、持ち帰る分の素材を確保したあとの残りをどうにかしたいと考えていた。
そのため、余り素材を魔石に変えることができないかと考えていた。
だが、発想を変えてみてはどうだろうか。
例えばだけど、今俺が一番求めているのは魔石そのものではなく、魔石によってマジックバッグの容量を拡張できることだ。
マジックバッグの容量が増えれば、いずれは魔境で得た魔物素材をすべて持ち帰ることもできるようになるだろう。
そして、これまでの経験上、魔石にはそれぞれにエネルギーの量に違いがある。
例えばだけど、火を使って攻撃してくるが体の大きさは小さな火狐と、巨大で探索者はパーティーで対応しないといけないトレントから得られる魔石は大きさも違えば、マジックバッグやノクジルアックスなどを成長させられる度合いも違う。
火狐の魔石よりも、トレントの魔石のほうがよりアイテムを強化できるのだ。
つまり、俺が求めるのは、道具をより強化できる強力な魔石である、ということだ。
それはつまり、新しく魔石を得ることは絶対条件ではなく、エネルギーを貯め込んだ大きな魔石が欲しいということでもある。
そこで、こんなことはできないだろうか。
倒した魔物の体からとれた魔石に、その魔物の遺骸からエネルギーを抜き取り、その魔石に回収するのだ。
それができれば、今は素材を持ち帰ることができなくとも、いずれはマジックバッグの容量を拡張し問題は解決となる、はずである。
「物は試しだ。早速、魔境で魔物を倒して試してみようかな」
水瓶に水を継ぎ足すことから思いついた、魔石そのものを強化してしまうという方法。
この魔石強化は倒した魔物の遺骸とそれから得た魔石が必要だと考えられる。
実際に試すには、まずは魔物を倒しに魔境へと入らねばならない。
俺はすぐに朝食の用意を祖母らと行い、朝ごはんを食べたレイラとともに魔境へと向かうことにした。
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