耳寄りな話
「そういえば、その杖はトレント材を使って新しく作ったやつなんだよね? どうなの、使い勝手は」
幾度かの戦闘を終えて、休憩を取ることにした俺は、安全な場所で休みながらレイラと雑談を始めた。
俺のノクジルアックスも柄の部分をトレントの枝からとった木材で作り直して扱いやすくなっている。
では、レイラの新しいトレント琥珀スタッフはどうなんだろうと思ったからだ。
「最高。今までよりも威力も上がって、魔力消費も抑えられている。これならもっと少年のために戦えるよ?」
俺の質問に対して、レイラは嬉しそうに答える。
かつて、ブレナンらとともに魔境探索をしたときには、レイラは戦力温存のためにあまり戦わなかった。
なので、彼女の感想を聞いても具体的にどうすごいのかは俺には分からないが、自信満々に言うだけあって前よりもよっぽどいい杖になっているんだろう。
威力も上がって消耗も抑えられるとなると、魔力的なコスパは二倍くらいに跳ね上がっているんじゃないだろうか。
そう考えるとすごいな、トレントの素材の価値は。
「でも、そう考えるともったいないよな。一体だけとはいえトレントに勝てるパターンができたのに、その素材を全部持ち帰ることができないのは、さ」
トレントを倒し、その魔石を使ってマジックバッグを強化する。
それは現実にうまくいっており、俺の持つウエストポーチ型のマジックバッグの容量は確実に増えている。
が、そもそもの話としてトレントは大きな木であり、小さな部屋くらいの容量まで増えているのに、一体だけのトレントであってもそのすべてを持ち帰ることはかなわなかった。
なので、傷の少ない幹部分と、比較的真っすぐに伸びている太めの枝を中心に集めて持ち帰ることにしている。
ほかの部分のほうが量的には多いのだが、どう頑張っても持ち帰ることは難しい。。
この場に残していったトレント木材は運がよければほかの探索者が持ち帰るかもしれないけれど、彼らにしても大きな荷物を移動させることはやはり厳しいだろう。
「そういえば、聞いたことがある」
「ん? なにを聞いたことがあるの、レイラ?」
「別の国にはダンジョンと呼ばれる場所があるそう。そこでは倒した魔物から素材をはぎ取ったら、いらない素材や持ち帰ることができない素材を魔石に変えて持ち帰るって話」
「……倒した魔物の素材を魔石に変える? そんなことできるの? たしかにそれができれば荷物の量が激減しそうだね。で、それってどうやるの?」
「知らない。詳しい方法は聞いたことがないし、この地方で知っている人がいるかどうかもわからない」
マジか。
その方法がわかっていれば、もったいないと思う俺の気持ちが解消されるだけではなくて、より効率よく魔石を手に入れられる手段を得られたのに。
トレントを倒して魔石を抜き取り、材木的価値がある部分を取り除いてから、ほかの幹や枝、葉を魔石化できるってことだろう?
それはつまり、トレント一体を倒すごとに得られる魔石の量が増えるということで、そうなればよりマジックバッグの強化も行える。
いずれは材木ギルドの木材置き場のような丸太を何百本も積んでおいておける容量すら手に入れられるかもしれないのに、わからないとか残念過ぎる。
「しょうがない。村に帰ったらガウェイン先生に聞いてみようか。ガウェイン先生が知らなかったらケイオス村で知っている人はいないだろうし」
わからないことは人に聞く。
今ここであれこれ考えても仕方がない。
気持ちを切り替え、その後もしばらくは森の探索を続け、日暮れ前には村へと帰還したのだった。
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