必勝パターン
「完全にはまったね。トレントが一体だけいる場合だと、この戦法で完封できそうかも」
オリーブタイプのトレントとの戦闘後、俺とレイラはほかのトレントとも戦闘を行っていた。
そして、そのトレントとの戦いにも無事に勝利している。
二人とも怪我はなく、危険を感じる場面もないまま勝利できた。
それは、一度目の挟撃による勝利が俺たちに対トレント戦での必勝パターンをもたらしてくれたからだ。
トレントは俺とレイラを見つけると、必ずレイラのほうを強敵とみなして警戒する。
たとえ、俺がトレントのすぐそばにいても、遠くにいるレイラを危険とみて、俺の存在がないかのように無視するのだ。
トレントから見れば、俺は目の前を飛ぶ虫ほどの脅威にも映っていないのかもしれない。
だが、このトレントの動きが俺たちに安全な勝利をもたらしてくれた。
内気功・迷彩を使い、斧が届く範囲にまで近づいた俺がトレントの胴体である幹に深く切れ込みを入れる。
すると、トレントは木の擬態を解いて怒りの表情を浮かび上がらせる。
が、そこで隠れていたレイラが立ち上がると、すぐにトレントは俺よりも強敵のレイラを警戒し、そちらへと回れ右をするように幹の向きを変える。
その動きを確認した俺は、再び斧を振るう。
これだけでも、幹の前後に深い切れ込みを入れることが可能だ。
トレントが大木タイプではなく、幹が細いものであればこの二回の攻撃だけでも討伐可能だろう。
だが、木の幹が太い場合にはそれだけでは倒せない。
けれども、再びレイラが動くことで、トレントの気をそらすことができる。
新たな隙を作り出せるというわけだ。
最初はレイラが高威力の魔術攻撃を行ったが、その後の戦闘では実際にレイラが魔術を放たなくとも二度の攻撃を行った俺から再びレイラがヘイトを稼げることが分かった。
トレントにダメージを与えられない程度の弱い魔術であっても、レイラが魔術を発動しようとするだけでもトレントは俺からレイラへと意識を完全に向けなおすのだ。
なので、その後の戦闘ではレイラは魔力の消耗を抑えるために威力が高いものではなく、ほどほどに消耗の少ない魔術を使っている。
あくまでも、トレントを倒すのは俺の斧による攻撃でというわけだ。
これにより、レイラの戦闘可能な時間も稼げることだろう。
もちろん、高威力の魔術をぶっ放して大木のトレントをへし折ってもいいのだけれど。
「今更だけど、戦利品の配分ってどうしようか? 主にトレントの魔石の扱いなんだけどさ」
「私はいい。少年が使って」
「いいの? じゃあ、遠慮なく使わせてもらうね。汝、この魔石を糧にし、力を得ん」
何体ものトレントを倒し、魔石を手に入れた。
この魔石をどうするかが、俺の中では悩みどころだった。
多分、一番現金化しやすく探索者にとって人気の戦利品だからだ。
だが、レイラは気にせずに好きにしてと言ってくれる。
本来なら、喧嘩しないように等分に分配すべきところなんだろう。
ケイオス村に来ている探索者たちの中には獲得報酬の分配で揉めて仲違いしている連中もいた。
が、俺はレイラの言葉をそのまま受け入れて魔石を自分だけで使うことにした。
なぜならば、早いところマジックバッグの容量を大きく拡張したいからだ。
トレントは大きな木材が手に入り、結構高値で売れる。
しかし、その大きさのために魔境の森奥深くから持ち帰ることが難しい。
トレント木材を効率的に持ち帰ることができるようにしたいがために、俺はトレントから手に入れた魔石はマジックバッグへ惜しみなく使っていくことにした。
こうして、単独でいるトレントに対して必勝態勢を確立した俺とレイラは、その後も森の中を移動しひたすらにトレントを狩っていったのだった。
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