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異世界に転生したけど、木こりをやってます ~斧と闘気で生きる辺境開拓ファンタジー~  作者: カンチェラーラ


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研ぎ

「よーし、終わりっと」


 カンッ、と薪が割れる。

 鉈の一撃によってきれいに割れた薪を拾い、薪小屋の棚に崩れないよう並べて置き、俺はふうと息を吐いた。

 すべての薪を割り終えたので、今日のノルマ達成だ。

 外気功・外纏を行うために集中し続けていた精神を解きほぐすために、片手でもう片方の手を掴み、グッと伸びをした。

 そのストレッチを行うと同時に、体内の気の流れも内気功で調整してしまう。

 長時間の薪割り作業により、わずかに乱れていた気の流れを整え直すことで、俺の体はいつも通りの体調へと戻る。


「さて、次は……っと」


 積み上げた薪が崩れるようなことがないことを確認し終えた俺は、次の作業へと意識を切り替える。

 朝から水汲みを行い、薪割りも長い時間してきたが、実はまだここで仕事が終わりではない。

 まだ重要な仕事が残っている。


 薪割りに使った鉈を回収し、それを持ちながら移動した。

 俺が向かったのは物置小屋だ。

 そこに鉈を片付ける前にすることがある。

 それは使用した鉈を研ぐことだ。


 物置小屋に置いていた砥石を手に取り、母屋から桶に水を入れて持ってくる。

 そして、その砥石を水につけ、水分を含ませる。

 そう、今からやるのはこの砥石で鉈という刃物の切れ味を回復させることである。


 薪割りという作業もそうだが、この刃物の研ぎ作業も、俺の仕事として行っている。

 といっても、これももちろんすぐに許可が出たわけでもない。

 子どもが刃物を持って扱うというのは、いくらど田舎の村にある木こりの家族でも危ないと止められた。

 が、ひと悶着も二悶着もありつつも、現在では物置小屋の砥石を勝手に使ってもいいくらいの信用を得るに至っている。

 今では、俺が使う鉈以外のものも研いでいい、むしろ研いでおいてくれと言われるほどになっていた。


 というのも、俺がかなり頑張って母や祖母が使っていた包丁も研いだりしたからだった。

 毎日の食事の調理のために使う包丁。

 その包丁だが、なかなかに年季の入ったものだ。

 それも無理はない。

 なにせ、ここにはホームセンターなんてものがないから気軽に包丁を買うこともできないし、使い込んでいる。

 そんな包丁をいくつもの砥石を使いながら、丁寧に、時間をかけてひたすら研いだのだ。


 その時は、暇だったこともある。

 テレビもラジオもインターネットもないこの生活で俺の楽しみといえば食べ物を食べるときか、闘気術の研究や修練くらいしかなかった。

 が、目の前に砥石があり、切れ味の落ちた包丁や鉈を見たときに、前世の記憶がよみがえったのだ。


 それは、とある動画投稿サイトにアップされていた数百万回再生された動画だった。

 たしか、タイトルは「百円の包丁を十時間砥石で研ぐ」とかいうものだったように思う。

 切れ味の悪い安物の包丁をひたすら研ぎ続けることで、その輝きは増し、まるで鏡のように人の顔すらも映る包丁へと生まれ変わる、そんな動画を思い出したのだ。


 暇で時間があった俺は、その記憶のような研ぎができるものなのだろうかと興味を持ってしまい、チャレンジしてみたというわけだ。

 動画では最終的には極微細のコンパウンドで磨いたりもしていたので、砥石だけでそれを再現するのは難しかった。

 が、かなりそれに近い状態まで研ぎができたのだ。

 外気功・外纏を使うことによって。


 薪割りでは鉈に対して闘気を纏わせることで、薪をきれいに割ることができた。

 が、その闘気を研ぎを行う際には刃物にではなく砥石に纏わせて行うと、研ぎやすさがアップしたのだ。

 さらに、内気功によって体の細かな動きも制御しやすくなり、微妙な力加減のコントロールもできた俺の研ぎは、しばらくすると家族間でも一目置かれるようになった。

 五歳児の仕事としてはどう考えてもおかしいが、この家ではもう誰も気にしていない。


 こうして、刃物を研ぐことに関しては家族用の包丁だけではなく、木こりとしての仕事道具である鉈や斧、あるいはノコギリの歯まで俺がやることになったというわけだ。

 というわけで、今日も物置にある刃物をすべてチェックし、状態が悪ければ切れ味が最高の状態になるように研いでいく。

 そんなふうにして、俺は今日も家庭内労働をこなしていった。

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