薪割り
家庭内労働のひとつである朝の水汲みを終えた俺だが、これでお役御免――というわけでは全然なかった。
水汲み以外にも仕事があり、俺は次の作業場へと向かう。
それは家の裏にある薪小屋のそばだ。
我が家は木こりを生業とする一家であり、木材を得てそれを売ることで収入を得ている。
なので、ここにある薪小屋はほかの家のものよりも大きく、大量の薪が積まれている。
そこに新たな薪を置いていくために、俺がこれから薪割りをする。
五歳児が鉈を振って薪割り。
冷静に考えると、かなり異常だ。
五歳の子どもに薪割りをさせていいのか。
しかも、保護者なしで。
そんな疑問は、いつの間にか消えていた。
これまでにも何度もここで薪割りをしてきて、家族は俺が薪を割る作業をするのを見守る必要はないと判断するくらいには信用を得ていた。
家族が森で伐った木が置いてあり、それを掴んで台の上に載せる。
適度な長さにした丸太の状態の木に対して、薪割り用の鉈を持ち、構える。
その時に、再び呼吸を整えて内気功・輪転を行う。
これから行う薪割りは当然肉体労働であり、全身の力を使うために必要だからだ。
だが薪割りのときは、それだけでは終わらない。
さらに別の闘気術も使う。
それは内気功ではなく、外気功と名付けた技術だ。
内気功が体内循環なら、これは外へ出す力だ。
この外気功も生まれてから五年ほどの闘気術の修練で身につけたものだ。
毎日内気功を行いながら肉体トレーニングや指圧マッサージをしているときに、気が付いたのだ。
体内に満ちた闘気が体の外にも出せる、ということに。
胴体部分から末端へと流れて、再び末端から胴体部分に戻る性質の闘気だが、実は末端部分などのツボから体外へと放出できることが分かった。
が、ただ放出するだけだと闘気は無駄に消費するだけになってしまう。
そこで、体外に出た闘気を利用できないかと考えた末に編み出したのが、外気功・外纏だ。
俺の体内から放出した闘気を手に持った鉈に纏わせて強化を行う技法だ。
これがなかなかに難しかった。
肉体内で循環させる輪転と違って、一度体外に出てしまった闘気が霧散しないようにしながら鉈にピタリと纏わせるようにコントロールするのは、数段高い技術が求められた。
なので、集中を欠くと外纏した闘気が消えてしまう。
そうならないよう、意識を闘気に集中させながら鉈を頭の上に持ち上げて構え、そして振り下ろす。
もちろん、薪割りのフォーム自体にも気を遣わなければならない。
いくら闘気で鉈を強化しても、きちんと薪に対して刃が当たらなければうまく割ることができないからだ。
鉈に纏った闘気がわずかに震える。
そのまま振り下ろすと――
カンッ。
乾いた音とともに、薪はきれいに割れた。
うまくできたようだ。
真っ二つに割れた木をもう一度台の上に載せて、再び鉈を構える。
薪は丸太の状態から何度か割って適度な太さにしないといけないのだ。
まだまだ割るべき薪があり、それらをすべて割り切るまで集中を切らずに闘気とフォームを意識する。
そんなふうに水汲み後の仕事としての薪割りも、俺の気と体を鍛えることにも使いながら、俺はひたすら鉈を振り続けたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




