エピローグ-130.蒼天の結婚式③ 麗しき竜人の成長、国家規模の祝福
部屋の扉に、ふたたび軽やかなノックの音が響く。
「あれ、もうセフィラ姉さんとアルおじさんもいたんだね」
入ってきたのは、銀の長い髪をさらりと揺らし、金色の瞳をした長身の美丈夫だった。
彼は私達を見て穏やかに微笑む。
「エリオス……竜人国の賓客のお出迎えはもうすんだの?」
「うん。……まさかイリス姉さんが直々に来るなんて思わなかったよ」
本来ならば出席は難しいだろうという前提で招待状を竜人国へと送ったのだが、まさかの快諾の返事が返ってきたのだ。
しかも女王陛下直々の御来臨ということもあり、公爵家の式という枠を超えた、国家規模の盛大な結婚式となってしまった。
「おかげで公爵家の面々は余計に準備が大変だったよ。俺も含めてね……」
アルがどこか疲れたように、遠くを見ながらため息を吐く。
「多分イリス姉さんは……何かと理由をつけて、僕へ会いに来たかったのだろうけれどね」
エリオスはそう言って、少し困ったように眉を下げて笑う。
出会った頃はあんなに小さかったエリオスも、高等部を卒業する頃には、誰の目をも惹きつける麗しい青年へと立派な成長を遂げていた。
そして現在は、竜人国と人間国をつなぐ大切な架け橋として、フォーサイス公爵家を拠点としながらも、さまざまな場所へと自ら赴いて外交を円滑にまとめている。
彼と初めて出会った幼い頃の記憶がよみがえり、私はその見事な成長に心をほころばせるのだった。
「そうだ、今度みんなも竜人国に来てよ。国家をあげて歓迎するよ」
「竜人国ねえ。何だか堅苦しそうだなあ」
「そこは否定しないけれど……。アルおじさんがもつ人間側の魔法知識はきっと外交に役立つし、ぜひ来てほしいな」
「ふふ、エリオスは仕事熱心なのね」
私はつい、彼が幼い時のように褒め言葉を送ってしまう。
エリオスはそれが嬉しかったようで、子どもの頃を思い出させるあどけない笑顔を浮かべた。
「僕が頑張れば、それだけ国同士が豊かになるからね。そうすれば、フォーサイス公爵家……ルナリア母さんとグレン父さんにも利益をもたらせるから」
「そんなこと気にしなくていいのに……」
「僕がそうしたいの。気が引けるのなら、結婚のお祝いだと思ってくれればいいよ。ルナリア母さん、結婚おめでとう」
そう柔和に微笑む笑顔は、誰もを虜にするほどの特別な魅力を秘めていた。
エリオスのその大人びた顔を見ながら、セフィラはぽつりとつぶやく。
「エリオスは……将来、いや現在進行形で、罪な男になっていそうね……」
「うん、そこかしこで黄色い悲鳴と、振られた人の悲鳴が上がっているよ……」
アルとセフィラが、深刻そうな顔で同時にうなずく。
その息の合いようが可笑しくて、私は思わず吹き出すのだった。




