エピローグ-128.蒼天の結婚式① 未来へ歩む聖女
その日は、雲ひとつない見事な蒼天だった。
窓から差し込む陽光が心地よく、私は少しうたた寝をしていたようだ。
「どうしたの? ルナリア」
隣に立っていたセフィラが、優しく声をかけてくる。
今日の彼女は、聖王国における最高の礼装を身にまとっていた。
厳かな気品に満ちながらも、彼女が持つ明るい空気とよく似合っている。
「ちょっと疲れちゃったのかも。ここに来るまで、本当に色々なことがあったから……」
「そうね、高等部……特に最初の年は色々なことがあったものね」
セフィラは遠い記憶をたどるように、窓の外に広がる青空へと視線を向ける。
あの日、あの夜から数年が経ち、私達は無事に高等部を卒業した。
キリアン卿のおぞましい計画が白日の下にさらされた際、セフィラの留学自体も取り消されそうになる一幕があった。
しかし、彼女自身の懸命な尽力、そしてフォーサイス公爵家が聖王国の重鎮たちへ熱心に働きかけてくれたおかげで、いくつかの追加条件こそついたものの、無事に留学を継続することができたのだ。
そして、今日。
学舎を巣立ってから一年という月日を経て、私は彼女との再会を果たした。
「それにしても……セフィラ、あなた枢機卿を目指しているのでしょう?」
「ええ、今は大司祭の位まで上り詰めたわ。……私は今まで、周りのみんなに頼りきりだったからね。これからは私自身の力で、誰かを救い、聖王国をより良い方向へと変えていきたいと思ったの」
そう言って微笑む彼女の横顔は、高等部の頃よりもいくぶん大人びて見えた。
あの事件を経て、彼女の中にも大きな心境の変化があったのだろう。
彼女は今、故郷に変革をもたらすべく、日々奮闘しているようだ。
「神聖魔法も、聖女のあり方も……それに、闇属性との向き合い方もね。もっと素晴らしい形がきっとあると思うの。私はもっと、光に満ちた未来を築くために、ただ守られるだけではない力がほしいの」
「……セフィラなら、きっと成し遂げられるわ。この地から、私もずっと応援しているわね」
私は、強い決意を宿した彼女の瞳を見上げる。
こんな優しい友達を持てたことを、心から誇らしく思った。
「まあ、そんなお堅い話は別として……今日は聖王国の使いとしてではなく、一人の大切な友達としてここへ来たのよ」
セフィラは、私の白いロンググローブに包まれた手を、両手で包み込むようにして引き寄せた。
「結婚おめでとう、ルナリア。約束通り、公務を放り投げてきちゃったわ」
「ありがとう、セフィラ。私の結婚式にあなたが来てくれて、本当にうれしいわ」
私は、セフィラの温かい手に、自身の右手重ね合わせる。
「いいなあ。私もいつか結婚式を挙げたいわ……!」
「ふふ、セフィラは今、懇意にされている方はいないの?」
「……実はね、一人だけいるのよ」
セフィラはほんのり頬を染めながら、照れくさそうにはにかむ。
「え!? 誰? 私の知っている人?」
思わず身を乗り出してしまう。
セフィラにそんな相手がいたとは、まったく気づかなかった。
「ええ、ルナリアもよく知っている人よ。……実は高等部の頃から少し気になっていて……」
「もしかして……」
脳裏に浮かんだ驚きの名前を口にしようとしたとき、部屋の扉がノックされた。




