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彗星の時  作者: 燕兄さん
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奪回

 司令室では、ヤーコンとシャインが機関室に入っていく画像を確認すると、ガーゼル王がジーザ王子を呼び寄せた。

「ジーザよ、撤収の準備をしろ。此度の出兵は失敗じゃ。引き上げの準備指令を廻せ」

「な、・・なんと申された!」

「今回の出兵は間違いだったと言ったのだ。やはりこのような超古代の悪魔の武器に頼ってはならぬのだ」

ジーザ王子は蒼白になりながら食い下がった。

「しかし、すでに『天の国』領土の奥深くまで進撃できていますし、戦鉄牛もまだ全く無傷です。このまま進めば王都まであとわずか、敵の反撃など恐れるに足りません。しかも・・」


 そこまで言いかけた時、順調に進んでいた「動く砦」は、急激に速度を落とし急停止した。そのショックで立っていた者は床に投げ出され、固定されていなかった物が部屋中に散乱した。さらに、転んでいる人々が立ち上がる間もなく、今までの進行方向とは全く別の方向に動き始めた。

辛うじて椅子にしがみついて難を逃れたガーゼル王は、様々な映像が映っていた壁面や操作盤が一斉に切り替わり、一人の少年の顔が映し出されたのに気がついた。


ケインだった。


複数のケインの映像が一斉に話し始めた。

「地の国の偉大な獅子帝、ガーゼル王よ。私は天の国のケインです。今回私は、天神の力を手に入れました。そして今、その力を使ってあなたの『動く砦』を私の統治下に置きました」

幾分青ざめた表情のケインが、優しくも自信を持った言い方で続けた。

「今、王が乗っておられるその砦は、王都への道をはずれ、天の国と地の国の境にある母なる『レマ湖』に向かっています。超古代の兵器は今度こそ永遠の眠りにつきます。青く深い湖の底で」

 映像を見ていたジーザ王子は、学者達に向かって怒鳴った。

「どうなっておる。なんなのだ。あの画面は。この砦はどこに向かっておるのだ!なんとかしろ!・・そうだ、戦鉄牛を呼び寄せろ!あれに護らせるのだ!」

「無理だよ」

ジーザの声が聞こえたかのように画面のケインが応えた。

「戦鉄牛も僕のものだよ」

 ひとつの画面がケインの顔から戦鉄牛の映像に切り替わった。

 30体位の戦鉄牛が隊列を組んで走っている。突然先頭を走っていた1体が土煙を上げて地面に倒れこんだ。それを見習うかのように、後続の戦鉄牛達も次々と倒れていく。その後、地面に半分めり込み動かなくなった戦鉄牛の胴体後部のハッチが爆発音とともにはじき飛び、下帯姿の操縦者が這い出してきた。頭に繋がった線をはずしながら、変わり果てた戦鉄牛の姿に呆然としている。



 こめかみに指を当てて映像を見ていたガーゼル王は、無敵の戦鉄牛が次々と倒れていく画像を見つめながら椅子からゆっくり立ち上がり、ケインの映像に視線を移して言った。

「天神の力を手に入れたということは、カール大帝以来の大帝の誕生ということですかな?

ケイン殿?」

 やはり、ケインには聞こえているのであろう。ケインの声が司令室中に響いた。

「そういうことになります。今、再び天の国に大帝が誕生しました。私はケイン大帝です」

「・・そうですか。そういうことであれば、新しき王の誕生に敬意を表して、我々は引き上げましょう。お祝いは後ほどお送りいたします。ジーザ王子よ、全軍に指令を廻せ。祖国へ帰還せよと」

ジーザ王子は、握ったこぶしを震わせながら頷いた。

「・・はっ、判りました。全軍へ伝えます・・」

「我々も、この砦から退去する。皆、ご苦労であった。撤収じゃ!」

そう言うと、ガーゼル王は朱色のマントをひるがえして、振り向きもせず、司令室から出て行った。



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