ケイン大帝の危機
ギガベースは、砂埃を上げながら『レマ湖』へ向かう荒野を進んでいる。
その姿を、ヤーコンとシャインは近くの丘の上から見つめていた。
「あの速度ですと、1時間程でレマ湖に着きますな」
ヤーコンがシャインの隣に立ったまま言った。シャインは、胸に開いた穴を手で押さえ地面に座ってギガベースを眺めていた。
そう言っている間に、ギガベースの複数の出入り口から人がバラバラと出てきた。かなりのスピードで走っているにも関わらず、皆、飛び降りて地面に転がっている。
「おぉ~、皆出てきますな~、あぁ、あんな転び方じゃ怪我をするぞ。まあ、ケイン様にレマ湖に沈めるぞと言われたら、仕方ありませんな」
二人は、ギガベースの機関室で「イオノスⅢ」からの遠隔操作モード設定に切り替え、操作盤のモニターにケインが映ったのを確認してから、なんとか脱出に成功していた。
「しかし、あの「砦」は、もうケイン様の手の内に入ったのですから、なにもレマ湖に沈めなくても良いのではないですか」
シャインは、口端から流れ出る液体をそのままにかすれ声で答えた。
「ギガベースの本当の力はあんなものじゃありません。あれが装備している兵器がフル稼働すれば、天の国はおろかこの大陸が全て吹き飛ぶほどの力があります。天の国も含め今の時代のどの国でも使いこなすことはできません。あってはならない超古代の禍物なのです」
「ふむ、確かにあの砦も戦鉄牛も、この世のものとは思えないようなものですからな」
シャインはヤーコンを見上げると微かに微笑んだが、次の瞬間、遠くを見つめるような目つきになり呟いた。
「・・ケイン殿・・」
「どうされた。シャイン殿、ケイン様になにかあったのですか?」
シャインは、しばらくの間ピクリともせず固まったようになり何か呟いていたが、やがてヤーコンの方を見た。
「ケイン殿と連絡がつきません。イオノスⅢとの接続は維持されているようですが、返答がありません」
「・・どういうことですか?」
「ケイン殿は、王宮の操りの間でイオノスⅢ・・天神の力と繋がっていらっしゃいますが、気絶してしまっているようです。操りの間に入れるのはケイン殿以外は私だけです。気を失っているケイン殿を助けられるのは私しかいませんが、この損傷状況では約一時間位で私の全機能は完全停止します。一時間以内に王宮に戻ることは不可能です」
「・・そ・そなたは後1時間しか生きられないということですか?!・・・ということは・・・ケイン様はカール大帝のように操りの間で死んでしまうと?」
「・・・・・」
シャインは答えなかった。どんなに計算してもケインを救助できる確率は「0」だったのだ。




