第47話 ジンキvsミーンネス
大和連合の倉庫。
重たい空気を裂くように、ミーンネスが一歩前に出た。
短髪に血走った目。口元には狂気じみた笑み。舌で唇を舐めながら、金属バットを肩に担ぐ。
「ククク……俺はな、勝つためならなんでも使う。それが“ミーンネス”のやり方だ」
バットをコンクリートに叩きつけ、甲高い音を響かせた。
ジンキは拳を握り、構えを取る。
「……テメェみてぇなクズ、俺は大嫌いなんだよ」
「ほざけぇ!」
叫ぶと同時に、ミーンネスの右脚が閃いた。テコンドー仕込みのハイキック。ミーンネスはテコンドーの使い手でもあった。空気を裂き、ジンキの頭を狙う。
「速ぇ!」
ジンキは紙一重で身を沈め、蹴りをかわす。直後に左ストレートを返すが、ミーンネスはバットで受け止めた。
「ガァンッ!」金属音が倉庫に響く。
「はははっ! どうしたぁ! 拳だけで俺に勝てると思ったか!」
ミーンネスの蹴りが連続で飛ぶ。ミドル、ロー、ハイ。鋭い回転がジンキを追い詰める。
「くっ……!」
腕で受けるたびに骨に響く。蹴りの重さは尋常じゃない。さらにバットが加わり、ジンキはじりじりと押し込まれていく。
―
「終わりだ!」
ミーンネスがバットを大きく振り下ろした。
ジンキは瞬時にステップイン。頬をかすめる風圧。すれ違いざまにボディへショートフックを叩き込む。
「ぐっ……!」
ミーンネスの身体がわずかに沈む。
だがすぐに膝蹴りが飛び込んできた。ジンキの腹を直撃。
「ごはっ!」
肺から空気が漏れる。膝が折れそうになるのを必死に堪える。
「ほらほらどうした! まだ立つか!」
バットが横薙ぎに振られる。
ジンキは腕で受け止めたが、肉が裂け、鮮血が飛んだ。
「……チッ」
歯を食いしばり、痛みを無理やり飲み込む。
―
「拳だけで武器に勝てるかよ!」
ミーンネスは狂気の笑いをあげ、連撃を仕掛ける。
蹴り、バット、また蹴り。容赦のない畳みかけ。
ジンキは必死にステップでかわし、ガードで防ぐ。だが被弾は避けられない。肩が裂け、脇腹に青痣が広がる。
「……速ぇ上に、汚ぇ戦い方しやがって……!」
だがその目は、まだ死んでいなかった。
「……だが、俺は拳で勝つ」
ミーンネスのハイキックが飛んでくる。
ジンキはあえて下がらず、踏み込んだ。頬をかすめる蹴りの中へ飛び込み、顎にアッパーを突き上げる。
「ぐぉっ!」
ミーンネスの頭が跳ね上がる。
だが彼は怯まない。顔を歪めながらもバットを振り回し、ジンキを牽制する。
「しぶといなぁ! けどもう限界だろ!」
「限界? まだまだだ!」
ジンキは血に濡れた口元で笑う。
―
戦いは苛烈を極めた。
ミーンネスの蹴りがジンキの肩を打ち抜き、バットが背を薙ぐ。
ジンキの拳がそのたびに反撃を繰り出し、頬や腹に食い込む。
汗と血が飛び散り、倉庫の床に赤い斑点が広がる。
周囲の兵隊たちが息を呑んで見守る中、二人の影が交錯した。
「はぁっ、はぁっ……ククッ……やるじゃねぇか……!」
ミーンネスは血を吐きながら笑う。
「だが、勝つのは俺だ!」
ジンキは荒い息を整え、瞳をぎらりと光らせる。
「いや、勝つのは……俺だ」
―
ミーンネスがバットを振り上げ、踏み込む。
だがその瞬間、ジンキはステップを切り、視線で動きを先読みした。
「見えた!」
右ストレート――顎を撃ち抜く。
「ぐはっ!」
衝撃でミーンネスの体がぐらつく。
ジンキは畳みかけた。
ボディ、フック、アッパー。拳が嵐のように降り注ぐ。
「これで……終わりだぁぁ!」
最後の一撃がこめかみに突き刺さり、ミーンネスの身体が宙を舞った。
壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。
倉庫に沈黙が訪れる。
ミーンネスは血まみれで動かない。
ジンキは荒い呼吸を繰り返しながら、拳を下ろした。
「……武器でも、蹴りでも……俺は拳で全部ぶち抜く」
周囲の兵隊たちは震え、後ずさる。
その姿は、まさに「拳鬼」だった。
ジンキの影が、月光に長く伸びていた。




