第45話 大和連合突入
夜の大和の街。
街灯が切れかけてチカチカと明滅し、コンビニ前にはヤンキーたちがだらしなく座り込んでいた。
ジンキがバイクを停め、ゴウキと並んで歩み寄る。
「おい」
ジンキが靴で一人の肩を軽く小突いた。
「大和連合のアジト、どこだ?」
「はぁ? 誰に口きいて……」
次の瞬間、ゴウキの拳が横から飛び、男の頬を直撃。ベンチごと吹っ飛んだ。
残りの数人が慌てて立ち上がる。
「な、なにしやが――」
ジンキの拳が顎を撃ち抜き、別の男が膝から崩れ落ちた。
残った一人が青ざめて震える。
「し、知ってる……! 言うから……!」
震える指が北側の古びた倉庫を指した。
「最初からそう言えってんだ」
ジンキは鼻で笑い、ゴウキと並んで歩き出した。
―
アジトは錆びた鉄骨の倉庫だった。シャッターには「大和連合」の落書き。入口前には数名の兵隊がたむろしていたが、二人を見るなり武器を構えた。
「誰だテメェら!」
「潮多の制服か!? なめやがって!」
次の瞬間、ゴウキが突っ込んだ。
両腕で二人をまとめて抱え上げ、そのまま地面へ叩きつける。コンクリートが鈍い音を立ててひび割れる。
ジンキも滑り込むように踏み込み、鉄パイプを振るう男の懐に潜り込む。
「遅ぇ」
顎へショートアッパー。男の目がひっくり返り、後頭部から崩れ落ちた。
残りは数秒で沈黙した。
「……話になんねぇな」ジンキが肩をすくめる。
シャッターがギィと音を立てて開いた。
中から現れたのは四人の男たち。どれも香田と互角の戦いを繰り広げた諸岡と、同格と呼ばれる大和の幹部だった。
「潮多のガキが……ここまで乗り込んでくるとはな」
「調子に乗るなよ」
鋭い眼光と、ギラついた殺気。手には鉄パイプやチェーン、そして拳を固める者もいる。
ゴウキは一歩前へ出る。
「ジンキ、二人ずつだ」
「おう、ちょうどいい」ジンキは笑って拳を握る。
戦いは一瞬で始まった。
―
ゴウキの相手は巨体の二人。
一人はハンマーを振りかざし、もう一人は鉄パイプを振り回す。
だが、ゴウキは怯まない。
「オラァ!」
鉄パイプが振り下ろされる瞬間、ゴウキは踏み込んで相手の腰を掴んだ。
そのまま渾身の背負い投げ。巨体が宙を舞い、床に叩きつけられる。鉄骨が揺れ、砂埃が舞った。
残った一人がハンマーを振り下ろす。
「死ねやァ!」
ゴウキはその腕を素手で受け止め、握り潰すように捻る。悲鳴が響いた。
「うるせぇ」
みぞおちに拳を叩き込み、崩れ落ちた相手をさらに投げ飛ばす。
二人は呻き声も出せずに沈黙した。
「……次」
―
ジンキの相手は動きの速い二人。
一人は蹴りを主体に、もう一人はボクシング仕込みの拳を構える。
だがジンキの瞳は冷静だった。
「ほぉ……少しは速ぇな」
蹴りを紙一重で避け、懐へ潜り込む。拳が閃き、ボディへ突き刺さる。
「ぐっ……!」相手が息を詰まらせた瞬間、顎へフック。
男は白目を剥き、床に転がった。
もう一人が左右の連打を浴びせてくる。
ジンキはわずかにステップを切り、視線でリズムを読み取る。
「見え見えだ」
カウンターのジャブが相手の鼻梁を砕き、続けざまに連撃を叩き込む。
倒れた体を見下ろし、息を吐いた。
「ったく……これで幹部かよ。大したことねぇな」
ゴウキとジンキが同時に立ち上がる。
幹部四人は全員、地面に沈んでいた。
―
その奥。
倉庫のさらに深い影から、ゆっくりと足音が響いてきた。
「ククク……まさか本当に来るとはな」
「ピンチはチャンスってか、潮多に攻めてるときを狙って俺らのシマに、しかも二人で乗り込んでくるとは度胸あるじゃねぇか、お前らが頭の双天鬼だな?」
姿を現したのは二人の男。
双子のようによく似た顔。だが、纏う空気は全く異なる。
兄――有森カズハ、通称カウアード。細身で長い前髪が片目を隠し、口元に冷たい笑みを浮かべている。
弟――有森フタバ、通称ミーンネス。逆に短髪で、血走った目をぎらつかせ、舌で唇を舐めながら笑っていた。
「俺らが大和連合の頭――有森兄弟だ」
「歓迎するぜ、双天鬼」
ジンキが鼻で笑う。
「ようやく出てきやがったか」
ゴウキが一歩踏み出す。
「――ここからが本番だ」
倉庫の中に、血の匂いと鉄の軋む音が満ちた。
有森兄弟と双天鬼。
本当の戦いが、いま幕を開けようとしていた。




