第22話 拍岩高校襲来
ゴールデンウィーク明けの数日後。
昼下がりの潮多工業は、いつもと違うざわめきに包まれていた。
校門の外から怒号が響く。
「おい、出てこい双天鬼ィ! マッスルが落ちた今がチャンスだ! 拍岩の時代だぞ!」
拍岩高校。
県内でも名は知られている不良校だが、勢力的には潮多よりも下と見られていた。
その彼らが四十人近くの人数を揃え、校庭に雪崩れ込んできた。
「双天鬼!! 最近調子こいてる一年坊がいるらしいじゃねぇか!」
「いい気になってんじゃねぇぞ!」
怒鳴り声が飛び交い、無関係の生徒が次々と殴られていく。
廊下の窓から見ていた普通の生徒たちは悲鳴を上げ、教室の隅に隠れた。
「や、やべぇ……マジで攻めてきやがった」
「双天鬼が呼ばれてるぞ……」
「でもよ、あんな大勢に出て行く奴なんていねぇだろ」
ざわつきは恐怖に満ちていた。
教師も慌てて職員室から飛び出し、携帯を握りしめる。
「すぐ警察を――」
しかし、その声が廊下に響くと同時に、拍岩の連中は口々に笑いながら叫ぶ。
「おい双天鬼! 出てこなかったら腰抜けって触れ回るぜ!」
「先公!もし警察に連絡しやがったら容赦しねぇぞ!サイレンの音が聞こえた瞬間、無関係のガキ共をもっと半殺しにしてやるからな!」
「双天鬼さえ差し出せば他の奴らには手を出さねぇでやる!」
倒れ込む潮多の生徒たちが呻き声を上げる。
見ている誰もが凍りついた。
―
屋上。
双天鬼――ゴウキとジンキ。そして香田にコウスケ。
四人はフェンス越しにその光景を見下ろしていた。
「……なんだあいつら」
ジンキが冷ややかに呟く。
コウスケは顔を引きつらせながら説明する。
「拍岩高校だ……潮多より下って言われてたけど、マッスルが落ちたのを見て一気に攻め込んできた。数で押し切る気だな」
ゴウキは苛立ったようにフェンスを掴んだ。
「四十人ぐらいか? 上等じゃねぇか……!」
「いや待てって!」コウスケは慌てて制止する。
「見ろよ、普通の生徒まで殴られてる! 下手したら死人が出るぞ!」
下から聞こえてくる怒号と悲鳴。
恐怖に震える生徒たちの姿は、誰の目にも鮮明だった。
周囲の生徒たちの声も届く。
「さすがに出てかねぇだろ……」
「いやでも出なきゃ“腰抜け”だって……」
「潮多の看板は地に落ちる……」
その声は双天鬼たちの耳にもしっかり届いていた。
―
一方、校舎裏。
マッスルはベンチに腰掛けていた。
全身にはまだ戦いの痕が残っている。
だが、その目は静かに拍岩の騒ぎを見つめていた。
「……早速これか」
低く呟く。
「やつらは潮多を守るなんて考えちゃいねぇ。強さを示して、ただ名を轟かせるだけだろう」
握った拳にまだ震えが残っていた。
「トップからは落ちたが……俺が行くしかないか」
そう立ち上がろうとした瞬間。
―
「ドゴォッ!!」
凄まじい打撃音が校庭に響いた。
拍岩高校の数人が宙を舞い、地面に転がった。
「な、なんだ!?」
「後ろから……!」
砂煙の中から姿を現したのは――双天鬼。
その背に香田。少し距離をとってコウスケもついてきていた。
ゴウキが大声で叫ぶ。
「あーー! やっぱ舐められたままじゃいられねぇな!」
ジンキは静かに腕を回しながら言う。
「潮多を守るとか、そんなつもりはねぇ。けど……男として退けねぇ」
香田は笑みを浮かべ、肩を鳴らした。
「早速のイベントかよ! やっぱお前らといると退屈しねぇな!」
そしてコウスケは声を震わせながらも、仲間の背を押すように叫ぶ。
「よ、よし! 行け、お前ら!」
―
拍岩高校のリーダー格が前に出た。
金髪を逆立て、金属バットを振り回しながら叫ぶ。
「双天鬼……やっと出てきやがったな!」
拍岩高校の不良たちが一斉に構える。
校庭は怒号と緊張で満ちた。
だが潮多の生徒たちの目は違った。
震えながらも、胸の奥で何かが熱を帯びる。
(双天鬼……あいつら、本当に戦う気だ……!)
屋上から校庭へ。
四人の影が伸びる。
嵐のような戦いが、いま始まろうとしていた。
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