第2話 拳で語る再会
「……マジかよ!お互い考えること一緒か!」
肩を揺らして笑い合う豪鬼と迅鬼。
その声に、不良たちの眉間がピクリと動いた。
最前列にいた金髪の男が、真っ赤な顔で唾を飛ばす。
「……おいコラ。なに笑ってんだよ、新入りッ!」
空気が一気に張り詰めた。
昇降口の空間を支配するような怒声。周囲で見ていた新入生たちは息を呑み、後ずさる。
まるで時が止まったように、廊下に残るのは緊張した呼吸音だけだった。
ゴウキは頭をかきながら「あーあ、めんどくせぇ」とぼやいた。
「別にお前らで笑ったわけじゃねぇよ。ただ――」
隣でジンキがスッと目を細める。
「……俺ら、再会が嬉しかっただけだ」
その落ち着いた物言いが、逆に火に油を注いだ。
「ふざけんな!潰せッ!」
金髪の号令と同時に、五人が一斉に突進してきた。
―
最初に前に出たのはゴウキだった。
豪腕を振り抜く。
「よいしょッ!」
拳が空気を裂き、先頭の一人の頬に直撃。
バギィッと鈍い音を立てて男が横に吹き飛んだ。
「ひっ……!」
新入生の誰かが小さく声を上げる。
すかさず二人目が飛び蹴りを仕掛けてくる。
ゴウキはニヤリと笑って受け止め、両手で相手の足を掴んだまま――
「よっと!」
そのまま床に叩きつける。ゴン、と床板が鳴り、不良は呻き声を上げて動かなくなる。
「まだ来るかよ!」
ゴウキは嬉々とした笑みを浮かべた。
その姿は、ただの喧嘩ではなく“力を解き放つ爽快感”そのものに満ちていた。
―
その横で、ジンキは別世界のような無駄のない動きを見せる。
一人の拳を半身でかわし、肘を相手の鳩尾に突き刺す。
「ぐっ……!」
息を詰まらせた不良の顎に、即座にジャブ。
乾いた音とともに男は崩れ落ちた。
「は、速ぇ……」と誰かが呟く。
もう一人が背後から木刀を振りかざした。
その影を感じ取ったジンキは、振り向きざまに後ろ回し蹴りを放つ。
「ドガッ!」
木刀が宙を舞い、男の体は回転しながらロッカーに叩きつけられた。
「……下手な道具に頼るな。身体ひとつで十分だろ」
冷たい声が、残る不良たちの足を竦ませる。
―
最後に残ったのは、金髪のリーダー。
周囲の仲間が次々に倒れ、顔面を引きつらせながらも虚勢を張る。
「お、俺を誰だと思ってんだ! この学校じゃ俺が――」
その言葉を遮ったのは、ゴウキの足音だった。
ドン、ドン、と床を響かせながら近づく。
拳を下ろしたまま、それでも威圧感は雷鳴のように広がる。
「学校がどうとか、誰がトップだとか……正直どうでもいいんだわ」
「は、はぁ?」
「俺らが欲しいのは……普通の青春だ!」
ゴウキの拳が唸りを上げて振り下ろされる。
金髪の男は両腕で必死にガードしたが――
「バギィィッ!」
衝撃が腕ごと突き抜け、男は昇降口の扉に叩きつけられた。
ガラスがビリビリと震え、静まり返る。
落ちた桜の花びらがふわりと揺れ、戦いの終わりを告げるようだった。
―
沈黙。
呻き声だけが響く中、新入生たちは目を丸くしていた。
「……つ、強すぎる」
「なに者だあの二人……」
「一年だってよ。信じられねぇ……」
やがて誰かが小声で呟いた。
「……あいつら、ただ者じゃねぇ」
その言葉が連鎖するように広まり、ざわざわと恐怖と期待が入り混じった空気が昇降口を満たした。
視線を浴びながら、ゴウキとジンキは同時にため息をついた。
「……なぁジンキ。俺ら、普通の高校生活しようって思ってたよな?」
「……そのはずだ」
「これ、もうバレバレだろ」
「……もう終わったな」
二人は顔を見合わせ、また吹き出した。
その笑い声は、緊張に支配された場を一気に解きほぐすように響き渡った。
こうして――県外に来てもなお、拳で始まる二人の物語が幕を開けた。
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