表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

第二十三話 神社とお寺の関係の歴史

今日は仏像の話とは少し離れますが、

神社とお寺の関係の歴史を、

自分なりに概観してみたいと思います。

かって私は神社とお寺をはっきりと区別しない人を

理解出来ませんでした。

しかし殆どの人は

お正月や七五三に神社に行き、

神前結婚を挙げて、

人が亡くなればお寺に行くということを平気でしています。

そしてクリスマスになればプレゼントをします。

理屈っぽい私は

宗教的には全くおかしいことだと思っていました。

しかし奈良に暮らすようになって

毎日のように神社仏閣を巡るようになって、

それが日本人の暮らし方なのだ

ということを感じるようになりました。

そうです。神仏混淆でいいのだと思うようになったのです。


元々日本人は八百万という

とてつもなく多数の神様を信仰していました。

したがって6世紀のころ朝鮮半島から仏教という

新顔の神様が加わっても、

あまり抵抗なく受け入れたのではないでしょうか。

例えば病気になった人のところに

薬草の知識が豊富な僧侶が、

薬を調合した上で不動護摩などをおこなったりしたときに

治ったりすれば、

それは「お不動さまのお陰だ」ということになって

仏様への信仰が生まれるなんてことは

不思議なことではありません。

でもだからといって日本人は

以前から信仰している地域の神様への礼拝を

止めてしまうことはなかったと思います。


平安時代の頃には、お正月を神道中心にお祭りする代わりに

お盆は仏教中心にお祭りするとか、

子供が生まれた時は神社にお参りする代わりに

人が亡くなった時は坊さんが来てお経をあげるとかといった形で、

両者は宗教的行事を役割分担したり、

お寺にはその境内を鎮護する神社があり、

神社にはその神を護る神護寺があるように

共存するようになりました。


鎌倉時代の頃は禅宗・浄土系諸宗の積極的な活動もあり

仏教側がかなり優位に立ち、

神は仏が仮にあらわれたものとする

「本地垂迹説」なども唱えられました。



さらには戦国時代も終わるころになると、

キリスト教が伝来しますが、

丁度仏教が伝来したときのように

「たくさんある神様のひとつ」として受け入れていた

日本人も多かったのではないでしょうか?

しかし信者が増えてその勢力がかなり強くなってくると、

かって本願寺や比叡山などが

織田信長から弾圧を受けたのと同様に、

キリスト教も豊臣秀吉や江戸幕府から弾圧を受けるに至ります。

そしてキリスト教徒が起こした

島原の乱にショックを受けた江戸幕府は、

その後キリスト教に対して厳しい禁令を敷きます。

そしてキリスト教徒を締め出すために、

江戸幕府は全ての人が

必ずどこかのお寺の檀家にならなければならないという

制度を推進し、これが宗教界を沈滞させてしまいました。

お寺側では国家的に優位性が認められたことで安住してしまい、

布教活動が停滞して活力を失うことになります。


しかし、明治維新になって幕府の治世が終わると、

政府は、お寺と神社を明確に分離しようという意図で

神仏判然令を出しますが、

政府の意図を越えて破壊的広がりを見せ、

全国的な廃仏毀釈運動を起こしてしまいます。

すなわちお寺や僧たちに反感を覚えていた民衆が

神仏判然令を「寺を廃し仏像は破壊せよ」と

拡大解釈して寺を襲撃するという事態が全国各地で生まれました。

この時期にずいぶん多くの貴重な仏像が

或いは破壊されあるいは海外に流出してしまいました。

明治政府も民衆の過熱に驚き、

寺を廃せよなどとは言ってない、

という布告を出したりして対応しますが、

沈静化にはかなりの時間を要しました。

お寺のような山門があって中に神社があるところ、

神社で梵鐘を持っているところなども残っていますが、

これは神社とお寺が一体になっていたものの、

お寺側が廃された結果です。

この運動は仏教側にも深刻な打撃を与えましたが、

神道側も無傷というわけのはいきませんでした。

ひとつの村に神社は一つだけということで

多くの神社が廃止統合され、

神社の鳥居が境内からずいぶん離れた場所に建っている

という事態も数多くあったようです。


仏教・神道が本来の宗教としての姿に復帰できるのは

戦後の宗教の自由化を待たなければなりませんでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ