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黄泉の町

三人は立ち昇る煙を目指し、森を歩き続けていた。


やがて木々が途切れ、眩しい陽光が降り注ぐ。


幸村は足を止めた。


その先には広い街道が延びている。


さらに視線を上げると、高い石壁に囲まれた大きな町が見えた。


白い壁。


赤や黒の屋根。


空へ向かって伸びる尖塔。


日の本では見たこともない町並みである。


「……。」


幸村は静かに目を細めた。


清海も思わず立ち尽くす。


「これは……。」


伊三は町を見渡し、感心したように息を漏らした。


「黄泉の町とは、上田の城下とはまるで違いますな。」


清海も大きく頷く。


「儂はもっと寂れた所と思うておりました。」


「左様か。」


幸村は小さく頷いた。


「儂も、このような黄泉は思い描いてはおらなんだ。」


三人はしばらく町を見つめる。


やがて幸村が静かに口を開いた。


「されど……。」


「秀吉公がお見せくださった南蛮の絵巻。」


「あれによく似ておる。」


その言葉に二人も改めて町を眺める。


なるほどと言わんばかりに頷いた。


「言われてみれば、そのようにも見えますな。」


「されど、これほど見事な町は見たことがござりませぬ。」


幸村も同じ思いだった。


秀吉から見せられた絵巻よりも、さらに大きく、美しい。


まるで絵巻の中へ入り込んだようであった。


街道へ目を向ける。


荷を積んだ馬車が行き交い、人々が忙しなく歩いている。


男たちは見慣れぬ鎧を身にまとい、長き剣を腰に提げていた。


幸村は目を細める。


「妙な具足よ。」


丸みを帯びた鉄兜。


全身を覆う鉄の鎧。


「信長公の南蛮胴具足に、どこか似ておる。」


されど、それとも違う。


この地には、この地の戦の形があるのであろう。


その時だった。


ぐぅぅ……。


静かな街道に、不思議な音が響く。


三人はゆっくり顔を見合わせた。


伊三が腹を押さえている。


「……兄者。」


「うむ。」


「腹が減りました。」


「儂もじゃ。」


清海の腹も負けじと鳴った。


二人は真剣な顔で頷き合う。


「殿。」


「何じゃ。」


「黄泉にも飯屋はございましょうか。」


幸村は二人を見て、ほんのわずかに口元を緩めた。


「さてな。」


その時。


風に乗り、香ばしい香りが流れてくる。


焼きたての穀物のような匂い。


清海が鼻をひくつかせた。


「殿。」


「何じゃ。」


「飯屋はありそうにござる。」


伊三も大きく頷く。


「これは黄泉も捨てたものではありませぬ。」


幸村は苦笑を漏らした。


「参るぞ。」


「はっ。」


三人は街道を歩き始める。


やがて石壁は近づき、町門の姿がはっきりと見えてきた。


その門をくぐった先で、自らの運命を変える一人の少女と出会うことになるとは――。


この時の三人は、まだ知る由もなかった

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